[TGS 2021]「サクナヒメ」を発売するマーベラスと,開発者の支援プロジェクトを行う講談社のキーマン同士がインディーズゲームのマーケティングなどを語ったフォーラムをレポート

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 2021年9月30日から10月3日まで開催されている東京ゲームショウ2021では,主にビジネス目的の参加者に向けて,「TGSフォーラム」の映像を配信している。本稿では,インディーズゲームにフォーカスしたセッション「インディーゲーム ヒットさせるための発掘・育成・マーケの手立て」の模様をレポートしよう。

※画像は配信映像をキャプチャしたものです
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 このセッションには,えーでるわいすが開発し,2020年11月にリリースされ大ヒットを記録したインディーズゲーム「天穂のサクナヒメ」(以下,サクナヒメ)のパブリッシングを担当したMarvelous USA/XSEED Gamesの細居賢志氏と,インディーズゲームのクリエイターを支援するプロジェクト「講談社ゲームクリエイターズラボ」を手掛ける講談社の片山裕貴氏が登場。両社の取り組みの紹介や,インディーズゲームについてのディスカッションを行った。

 はじめに登壇した細居氏は,XSEED Gamesがサクナヒメをパブリッシングすることになった経緯やリリースまでの経験を踏まえての知見を語った。

細居賢志氏
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 XSEED Gamesとえーでるわいすの出会いは,2014年に京都で行われたインディーズゲームイベント「BitSummit 2014」だったという。当時XSEED Gamesの副社長だったKen Berry氏が同サークルの「アスタブリード」を非常に評価していたそうで,「今後何かご一緒できる機会があればぜひ」と声をかけていたのだそうだ。

 その後,えーでるわいすから「稲作をテーマにしたゲーム作りたいと思っている」と,サクナヒメの先駆けとなるコンセプトについての連絡をもらったことだった。「これは面白そうだ」と思った細居氏は,自分たちがどれだけえーでるわいすと一緒にゲームを作りたいと思っているかを言葉にしてラブコールを送り,口頭ではあったものの合意に至ったのだという。

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 細居氏によるとサクナヒメの開発は,えーでるわいすに完全に任せる形とし,日本のマーベラスもXSEED Gamesも一切口を出さないようにしていたという。
 これについて細居氏は,「インディーズゲーム開発においてパブリッシャの役割は『開発に同乗すること』であり,コンセプトから携わっていないような人間が口を出しても良いものはできない,むしろ悪くしてしまう」と見解を述べた。

 また,インディーズゲームの開発においては,いわゆる普通の「ゲーム会社の常識」は無意味であるとも考えているそうだ。
 納期重視のゲーム業界では,締め切りを守るあまり,当初のコンセプトから削らざるを得ない要素が出てきて,開発者の納得のいく形にならないままリリースされるゲームも多くある。しかし,インディーズゲームはそういうしがらみから抜け出たものであり,開発のビジョンに到達するまではリリースが延期されても仕方がないと思っているという。
 そして,パブリッシャの役割は,まさにそういったしがらみが開発者の邪魔にならないようにサポートすることではないかと語った。

サクナヒメは何度かリリーススケジュールが延期されたが,これが功を奏し,2017年,2018年,2019年とE3に出展することができ,うまくマーケティングの山が作れたのだという。また,えーでるわいすが毎年内容の異なる体験版を提供してくれたこともあり,話題性が尽きなかったのも大きかったそうだ
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 マーケティングでも,お米にこだわったタイトルということを前面に打ちだし,米の卸販売を行っている神明ホールディングスや隠岐の島の米農家との取り組みを行うことで,ゲームメディアだけでなく,テレビなどからも大きな注目を集めた。リリース後も「令和の米騒動」というキャッチーなパンチラインが生まれ,大ヒットへつながったのではないかと細居氏は分析した。

 大ヒットを飛ばしたサクナヒメだが,細居氏は「インディーズゲームにおいて,目利きや方程式はない」と感じているという。そもそもえーでるわいすはもともと輝いていたサークルで,自分たちに目利きの才があったとは思わないし,サクナヒメの大ヒットは運に恵まれたことも多いそうだ。
 えーでるわいすと開発チームの化学反応や,開発の遅延により,結果的に露出する機会が多くなったことなど,決して狙っては作れないような出来事も多くあり,それが結果的に大ヒットへとつながったと細居氏は述べた。

 続いて,登壇した片山氏からは,「講談社ゲームクリエイターズラボ」の取り組みについての説明が行われた。

片山裕貴氏
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 「講談社ゲームクリエイターズラボ」は,インディーズゲーム開発者向けの支援プロジェクト。選出されたメンバーには,半年ごとに500万円,最大2年間で2000万円の開発支援金が支給されるほか,作業スペースの提供や担当者によるサポート,完成したタイトルの販促などが行われるというものだ。

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 また,支援プロジェクトによって完成したゲームの著作権は,応募者に帰属するというのも非常に大きなポイントだ。その理由として片山氏は,「支援プロジェクトが,漫画家や小説家と構築してきた関係性やノウハウをインディーズゲームでも生かすために立ち上がったものであるからだ」と語る。基本的に,講談社で出版された漫画や小説の著作権は基本的に作家に帰属するため,ゲームにおいても著作権はクリエイターにあり,講談社はそのサポートをしていくという考え方なのだという。

漫画や小説などで培った編集者のノウハウを生かして行われる「講談社ゲームクリエイターズラボ」。資金的な支援はもちろんだが,漫画や小説のように担当編集がつき,サポートも行われる
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選出されたラボメンバーには,広報やパブリッシングサポートのほかに,ローカライズのサポートなども行われる。片山氏曰く「作品作り以外は全部やります」とのこと
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 2020年9月から11月に募集された第一期生には,1263件の応募が集まり,その中の7名が第一期として合計10本のゲームを開発しているという。現在は第二期生を募集中とのことで,10月31日まで応募を受け付けている。

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実際にプロジェクトから生まれた作品たち。Hytacka氏が制作している「地罰が上れば竜が降る」は,YouTubeでゲーム開発の様子を実況しており,注目を集めているという
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インディーズゲームの魅力や開発者との付き合い方は? 細居氏と片山氏がディスカッション

 続いてのコーナーでは,細居氏と片山氏の2人がMCから投げかけられた4つのテーマについてディスカッションを行った。

 まず1つ目のテーマは「インディーズゲームのどこが魅力的なのか」というもの。これについて細居氏は「一言で言えば自由度」と語る。インディーズゲームは企画発案者の思いがそのまま反映されるので,ユニークなゲームが生まれることが多く,「こんなゲームが作れたら面白いのに」という誰もが一度は抱いたことのある発想を形にできる自由度が魅力的なのではないかと語る。

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 一方の片山氏は,編集者という視点からクリエイターの「作家性」が出ている作品に魅力を感じるという。漫画では作家の「こういうものが書きたい!」という意思があるものが非常に多く,その熱意によって作品が作られることも少なくない。片山氏はゲームについても同じことが言えるとし,支援プロジェクトでも重視しているポイントであると述べた。

 続いては,「インディーズゲームをどう発掘するのか」という質問が細居氏に投げかけられた。細居氏は,冒頭のプレゼンテーションの通り「インディーズゲームにおいて,目利きや方程式はない」という考えなので,自分だけが分かる光るものを見つけるということは現実的に難しいとし,イベントに足を運び,実際にゲームを遊んで,開発者と話をするという当たり前のことがある意味で“発掘”なのではないかとコメントした。

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 3つ目は,パブリッシャとして「インディーズゲームのクリエイターとどう付き合うべきか」というテーマ。これについては両氏ともに「開発以外のことをサポートする」という意見だった。
 細居氏は,法務や機材の提供,マーケティングといったものを一手に引き受けて開発に集中してもらうことが良いのではないかと持論を述べた。
 また,片山氏は細居氏に同意しつつも,それに付け加えて編集者ならではの視点として「クリエイターごとに対応を変えていく」ことが重要であるとも述べる。開発者によっては,ゲームについて意見がほしいという人もいれば,意見は要らないという人もいるので,それぞれが望むことによって対応を変えていく必要があると語った。

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 セッションの最後のテーマとなったのは「インディーズゲームをマーケティングするときのポイントは何か」というもの。
 これについて細居氏はサクナヒメが,3年連続でE3にそれぞれ異なる体験版を展開した手法に学びがあったという。毎年違う体験版を出すという手法はもともと,えーでるわいすからの提案で行われたものだったそうだが,従来のマーケティングでは,ネタの見せすぎにもなるためあまりやらないことだったのだという。しかし,結果的にそれが毎年話題を絶やさないことにつながり成功したため,今後はこういったマーケティングの考えもあるという気づきがあったそうだ。

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 片山氏は,講談社で,アイドルがインディーズゲームを毎回プレイするというYouTubeチャンネルの立ち上げを計画していることを明かし,今後は支援タイトルやそれ以外のインディーズゲームを遊ぶ場を作り,マーケティングにつなげていきたいと語った。

 以上,4つのテーマについてのディスカッションが終了したところで,本セッションは終了。最後にはインディーズゲームの発表会「センスオブワンダーナイト」などの東京ゲームショウにおけるインディーズゲームの取り組みが紹介され,締めくくられた。

著者: ” — www.4gamer.net