[GDC 2021]「ポケモンGO」の大型イベント・Pokémon GO Fest 2020を振り返る。初のバーチャル開催はどのように成功したか

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[GDC 2021]「ポケモンGO」の大型イベント・Pokémon GO Fest 2020を振り返る。初のバーチャル開催はどのように成功したか


 日本時間の7月20日に開幕した開幕したGDC 2021(Game Developers Conference 2021)にて,「ポケモンGO」(正式名称はPokémon GO,iOS / Android)の大型イベント「Pokémon GO Fest 2020」を振り返るセッション「Online Game Technology Summit: ‘Pokémon GoFest 2020’: Global Challenge Arena」が行われた。

 新型コロナウイルス「COVID-19」の感染拡大により,リアルイベントの予定から急遽変更となり,初のバーチャル開催となった2020年のPokémon GO Fest。その経緯や,世界中のプレイヤーが同じ時間を楽しむイベントを成功に導いたシステムなどについて,NianticのStaff Software Engineer & Technical Lead ManagerであるJames Prompanya氏が説明した。

左に映っているのがJames Prompanya氏。入社日はPokémon GO Festの初開催となった2017年7月の「Pokémon GO Fest シカゴ」当日とのこと。同イベントとは運命的な出会い(?)をしている

 「Pokémon GO Fest」は,コミュニティ・デイなどさまざまなイベントが実施されているポケモンGOのなかでもとくに大規模となる,年に一度のリアルイベントだ。2017年7月の「Pokémon GO Fest シカゴ」で始まり,アメリカのシカゴ,ドイツのドルトムント,そして日本の横浜という3都市で開催された「Pokémon GO Fest 2019」はその規模をさらに拡大し,各会場には多くの参加者が集まり,大きな成功を収めた。

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 人々が交流し,握手し,ハグし,笑いながら一緒に遊び,ポケモンを集める――2019年の勢いを維持しながらこのビッグイベントを継続すべく,Nianticは2020年の開催に向けて準備を進めていた。基本的には前年と同じ機能を使用するためシステム面は安定しており,初めの数か月間はバグ修正を行う程度。例年,年が明けて1月か2月には実施プランの策定は落ち着いているため,2020年も順調に進むはず……というところにやってきたのがCOVID-19の感染拡大だった。

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 1月の時点では,多くの人たちと同様にCOVID-19が何かを理解できていなかった。しかし,2月になって海外渡航の制限が行われたことでリアルイベント運営への影響が明らかとなり,あらためて事態の深刻さを知ることになる。3月にアメリカで始まったロックダウン(都市封鎖)が3週間で終了すると聞いた時点では「すぐに元に戻るのでは」という希望もあったが,事態の長期化が見えた3月末から4月初頭に“新しいプランが必要だ”と判断。当初の開催予定日である7月25日と26日は変更せず,かつ新たな形でのGo Festを開催するべく,5月から6月の2か月で新たな設計や構築,安定化に向けたテストに取り掛かった。
 開催日にこだわったのは,困難が続く2020年に向け,世界がポジティブになれるものを届けるためだ。

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 その2か月で,「安全が確保できる場所であれば,プレイヤーに外に出て遊んでもらえるようにする」「決してプレイヤーに罰則を与えない」「離れていても一緒に遊んでいるような感覚を再現する」「無理のない範囲でのゲームデザインで」という目標を定めて,新たなPokémon GO Fest向けの機能が考えられた。
 それが,先日(2021年7月17日,18日)開催された「Pokémon GO Fest 2021」でも実施された「グローバルチャレンジアリーナ」(the Global Challenge Arena)だ。世界中のプレイヤーが参加し,さまざまなチャレンジの達成や報酬獲得を目指すというもので,フレンドの進行状況が確認できるフレンドリーダーボードが“遠くにいても一緒に遊んでいる感覚”と“フレンドリーな形での競争意識”を生み,トラッキング機能によって自分がどこかにいるような体験がオンライン上で再現されている。

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 グローバルチャレンジアリーナを実施するにあたり,これまでにない多くの挑戦があった。とくに大きかったのが,複数の地域にいる世界中のプレイヤーたちのチャレンジ経過や報酬を同期させるところ。チャレンジと報酬といったゲーム部分は,基本的に既存のゲームシステムを拡張するのみで対応できたが,異なる地域のプレイヤー同士が同じ時間にゲームをプレイし,ともにチャレンジをクリアして報酬を得るというイベントを実現するには,例えば「ある地域(サーバー)では報酬が表示されているが,ある地域にはそれが表示されていない」といったことがあってはならない。異なるテーマを持つ5つのエリアに,各テーマに合ったポケモンが3匹ずつ登場する「スペシャルリサーチ」では,エリアが1時間ごとにローテーションで切り替わり,またそれぞれにチャレンジが用意されていたため,これも開始時間などの遅延は許されなかった。
 開催中はそれらの同期の問題がないか確認をする必要があり,グローバルチャレンジアリーナ自体は1日のイベントだが,タイムゾーンの違いもあって実質35時間近く管理をしていたという。

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 大きな問題を起こさず,世界中のプレイヤーが楽しめるイベントを実施するため新たに構築されたのが「Global stats aggregator」。プレイヤーたちの行動を正確に把握し,プレイ状況や達成したチャレンジの成果などをリアルタイムに反映するというシステムだ。
 経過や成果を集約するうえで重要視したのは,100%に近い精度でデータを集め,それをリアルタイムで反映させること。膨大なデータ量があり,それらをプレイヤーたちが見ることはできないため,データを調整したりごまかしたりといったことは技術的には可能だが,プレイヤー主体でのゲームプレイを大事なものと考えているポケモンGOにおいて,そのような選択肢はもちろんなかった。

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 すべてのプレイヤーの毎秒数千回に及ぶ更新をサポートできる同期カウンターでデータを集約。このデータを定期的に別のマイクロサービスに送信し,強力なクエリサポートを備えたデータウェアハウス「Google BigQuery」で分析し各地域のサーバーに反映するという同システム。これをいかにポケモンのゲットといった本来のゲームプレイに影響なく実行し,プレイヤーに最高の体験を与えるかが目標だったという。

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 システムが構築できたまではいいが,COVID-19によって急な実施方法の変更があったという経緯もあり,実装前のテスト期間は限られていた。社内の専門チームによる機能テストや,限定されたテスト環境による会社全体でのプレイアビリティの確認を行い,さらに“ダークローンチ”こと,サービスを行っている実際のサーバーでプレイヤーに見えない形での負荷テストを実施したとはいえ,ほとんどぶっつけ本番といえる状況でPokémon GO Fest 2020で投入された。

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 James Prompanya氏が「祈る思いで迎えた」というPokémon GO Fest 2020は,プレイヤーはご存じのとおり大きな結果を残す。世界中で数百万人のトレーナーが平均15キロ歩き,約10億匹というポケモンをゲットし,GOロケット団を5500万を超える回数退け,5500万個のギフトを送った。また,Nianticが,チケットの売り上げなど700万ドルを各コミュニティや非営利団体に寄付したことも,重要なトピックの一つとなっている。

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 前回で環境が整ったことから,より多くの時間をかけてテストし改良を重ねることができたというPokémon GO Fest 2021は盛況となった。2022年はどのような形での実施となるかまだ分からないが,James Prompanya氏は,リアルイベントとしてのPokémon GO Festが実施できるよう願っていると語っていた。

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