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火曜日, 5月 18, 2021

地図・位置情報の活用でニューノーマル社会を作る――CfJ代表・関治之氏らが議論【地図と位置情報】 – INTERNET Watch

株式会社ナイアンティック代表取締役社長の村井説人氏(左上)、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)教授の神武直彦氏(右上)、一般社団法人コード・フォー・ジャパン(CfJ)代表の関治之氏(左下)、マルティスープ株式会社代表取締役の那須俊宗氏(右下)

 地図・位置情報を活用した業務支援サービスやソリューションを提供するマルティスープ株式会社が10月下旬、オンラインイベント「iField ソリューションセミナー 2020」を開催した。同イベントは同社が毎年恒例で開催しているプライベートセミナーで、同社の業務支援サービス「iField」や、屋内位置測位サービス「iField indoor」などの活用事例、これらのサービスやソリューションに使用できるハードウェアの紹介などが行われた。

 さらに今年はマルティスープの設立20周年を記念した特別企画として、地図・位置情報に精通した識者を集めて、パネルディスカッションも行われた。「“ニューノーマル”の中で活きる位置・空間情報技術」と題したこのセッションでは、Pokémon GOやイングレスで知られる株式会社ナイアンティックの代表取締役社長を務める村井説人氏、一般社団法人コード・フォー・ジャパン(CfJ)代表の関治之氏(11月からは政府CIO補佐官に就任)、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)教授の神武直彦氏がパネラーとして参加し、マルティスープ株式会社の代表取締役である那須俊宗氏がモデレーターを務めた。今回はこのパネルディスカッションの内容をレポートする。

コロナ禍で位置空間情報技術はどう活用されるかCfJ代表の関氏、ナイアンティックの村井氏、慶應SDMの神武氏が語る

[那須氏]コロナ禍において、人の動きは圧倒的に制約されましたが、当社のクライアントである製造工場や物流倉庫、建設現場など、現場で稼働を停止したところはほとんどありませんでした。もちろん出荷量や生産量への影響は大きく、その変化に対応するためにわれわれはさまざまなニーズをいただいてますし、まだまだニューノーマルの中においてさまざまな課題が発生しています。

 今回お呼びしたパネラーの方々は、われわれが得意な産業分野以外の方で、位置空間情報技術に強く関わり、ご活躍されている方で、それぞれユニークな視点からニューノーマル、そしてニューノーマルの中で活きる位置空間情報技術についてアイディアをいただけるのではないかと思っております。

シビックテックをコミニュティとして地域全体に広げたい

[那須氏]最初にご紹介するのは、シビックテッカーであり、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトを立ち上げて、オープンソースとして公開したCfJの関さんです。まず関さんには、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトの舞台裏などをお聞きしたいと思います。

東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイト

[関氏]CfJを立ち上げたのは2013年で、2011年の東日本大震災のときのような対応を技術でできないかと思いながら始めたのがシビックテックの始まりです。それまで私はオープンソースやオープンカンファレンスに関わっていました。オープンソースなどの技術を市民がうまく活用することで、課題解決を自分たちで行うのがシビックテックで、それはビジネスというかたちでもいいし、市民のコミュニティ活動というかたちでも参加できます。

 そのようなシビックテックを行政ともいろいろとコラボレーションしながら進めて、それをコミュニティとして地域全体に広げていきたいと思って始めたのがCfJです。私は今でもGeorepublicというGIS(地理情報システム)の会社を運営しながらCfJも非営利団体での運営というかたちで、何足もわらじを履きながらやっていて、コロナの中でこのようないろいろな活動が今回花開いたかたちとなります。

 東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトのときは、ウェブサイトをCfJで開発し、それをGitHubに上げてオープンソースで公開して、多くの人からコミットをいただき、300人以上が参加してサイトを改良し、ほかの自治体にも広がっていきました。このサイト以外にも、テイクアウトが可能な店の地図サイトもシビックテックの中から生まれ、いろいろな地域のコミュニティに広がりました。シビックテックから生まれたものとしては、保育園を探す地図アプリなどもあり、この活動はGISと非常に相性がいい活動だと思います。

 東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトについては、想定以上に話題になったので、忙しくはありましたけど、開発自体は、特に想定外のことが起きたということはありませんでした。開発が始まってから4日くらいでプロトタイプのベータ版を立ち上げて、そのあとはどんどんいろいろな人からコミットが来て、それをひたすらさばいていったという1カ月でしたね。

「いつの間にかたくさん歩いて健康になっている」楽しいゲームを提供し続ける

[那須氏]次に登場するのはナイアンティックの村井社長です。リアルワールドゲームに新型コロナウイルスはどのような影響を及ぼしたか、そしてナイアンティックの理念である「Adventure’s on Foot」は今後一体どうなるのか、ということについてお聞きしたいと思います。

Pokémon GO

[村井氏]新型コロナウイルスは、われわれ自身も本当に大きな影響を受けました。その点についてはほかの企業と全く一緒の状況だったと思います。特にナイアンティックはリアルワールドゲーム、つまり人が外に出ることによって楽しめるゲームを提供しています。当社の社是である「Adventures on Foot with others」は、「ともに歩いて冒険に出よう」という主旨で、われわれのサービスを通して外に出て世界を知っていただき、人とのコミュニケーションを取っていただいて、これをぜひ活性化していこうというミッションです。

 コロナ禍という、みんなが逃げられないような現象が起きて、多くの方が「外に出たいけど出ることができない」という環境になった中、どのようにプロダクトを進化させていくかという点においてナイアンティックにはほかの企業とは違ったチャレンジがありました。

 コロナ禍においてプロダクトを提供していく中で、ミッションを見失うことなく、提供中のサービスを通じてプレーヤーがワクワクドキドキしながらゲームを楽しみ、「いつの間にかたくさん歩いて健康になっている」という環境をどうやって維持しながら新しいものを提供するか、これはわれわれにとって大きなチャレンジでした。リモートでも遊べる機能を提供したり、ポケストップを触れる範囲をもう少し範囲を広げてみたりと、外に出る機会が減ってもPokémon GOのワクワクドキドキ感を提供できるような開発をしてきました。

 コロナが収束したあと、いつか必ず人は動き始めます。そのときに、われわれのミッションである「Adventures on Foot with others」は必ず力になれると考えているので、それを大切にしながら今のプロダクトを開発しています。

[那須氏]ナイアンティックのゲームは、それで遊んでいるということが、ほかの人から見てよく分かります。「この人はPokémon GOをやってるな」とか、「この人はイングレスだな」とか。そういう点において普通のゲームとは少し違うと思いますし、コロナ禍においてもゲームを楽しめる環境を提供したのはすばらしいことだと思います。

コロナ禍は企業や個人の能力を広げるチャンス

[那須氏]次は慶應SDMの神武先生に、コロナ禍ではどのような環境の変化があったのかお聞きしたいと思います。大学も春からは通学できない状況になりましたが、神武先生が研究しているスポーツやコミュニティ、宇宙などの分野にはどのような変化が起きましたか?

[神武氏]私は位置情報ビジネスのイベントである「ロケーションビジネスジャパン」の実行委員長も務めていまして、最近はラグビーの選手にGNSSレシーバーを付けて、それによって試合中や練習中の運動量を計測し、チームコンディションをどのようにコントロールするかというテーマにも取り組んでいます。

 コロナ禍でチームの仲間と一緒に練習できないときに、それぞれ別々の場所で練習をして、運動量については位置情報、時間情報を取ることができれば、ある程度、練習のクオリティをコントロールできるようになってきています。今までは一緒にやっていたのが、それができなくなってしまったときに、位置情報や時間情報を共有することでコミュニケーションが起きて、練習に対する行動変容が起きました。オンラインで行うことにより、ひとりひとりのフィードバックが返ってくるようになり、練習がパーソナライズ化されたがゆえにかえって運動能力が向上した人もいます。

 もう1つは、インターネットのおかげでオンラインコーチングやオンライン教育、オンライン会議が非常に進んできたことが挙げられます。今まではオンラインで何かをするよりも、「会ったほうが早い」ということで敬遠されていたのが、オンラインでコミュニケーションせざるをえない状況になり、実際にやってみたらけっこうできた、という話に変わってきました。コロナ禍は確かに災いではあるのですが、もしかしたら企業や個人の能力を新たに広げるチャンスにもなるという気がしています。

 大学ではコロナ禍でずっとオンライン授業をやってきたので、学生はみんな「キャンパスへ行きたい」と言っていました。そこで最近はオンラインとリアルの授業のハイブリッドにして、全員来てもいいように教室も広げて、フェイスシールドも用意して細心の注意を払って準備したのですが、いざフタを開けたら来ない人のほうが多かった。学生自身がオンラインでの授業やコミュニケーションに慣れたんだと思います。何か特別な事情があれば大学に来るのですが、「基本はオンラインで参加し、必要に応じて大学に来る」ということが新しいライフスタイルになってきていて、今後そのことにどのように向き合うかが面白いところです。

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