『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』レビュー 驚異的なアニメ再現度で、現時点でプレイできる『鬼滅の刃』のゲームの最高峰

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『TVアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』の第2話を見ていて、不思議な感覚になっていた。「これゲームで見たシーンだ」と、アニメ版を見ていて思ってしまったのだ。ゲーム『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』はそれほどまでにアニメの再現度が高い作品だった。

『TVアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』は新作エピソード(第1話)などを加えて再構成したテレビシリーズ版。

「ヒノカミ血風譚」は『鬼滅の刃』の初となる家庭用ゲームで、ジャンルは3D対戦アクションだ。本作にはソロプレイとバーサス(対戦)の2つのモードがある。ソロプレイはアニメ『鬼滅の刃』のストーリーをゲームとして追体験できる。バーサスは炭治郎や煉󠄁獄さんといったおなじみのキャラクターたちから好きな組み合わせを選び、2vs2で対戦できる格闘ゲームのようなモードだ。

ソロプレイの魅力はアニメを完全再現したグラフィックや演出で、実際に自分で手を動かしてストーリーを追体験できるところ。岩を斬る修行と最終選別から始まり、最後には「無限列車編」の戦いまで実際にプレイできてしまうのだ。探索パートなどに若干の不満点こそあるものの、ファンならそれも許容でき、ソロプレイは大満足の出来である。

バーサスに関しては腕前を鍛えてeスポーツのようにプレイできるものではないが、パーティー対戦アクションとしては十分な作り。バトルでやれることは少ないが、シンプルな駆け引きがたのしめる良作だ。バランスやキャラクター数が少ない(現時点で18人)などの問題はあるが、家族や友達とプレイしたら間違いなく盛り上がれるはずだ。

なお、このレビューはアニメ版『鬼滅の刃』を「無限列車編」まで見ているのを前提としている(漫画だと、8巻の終盤まで)。物語の核心に迫る大きなネタバレについては避けているが、注意してほしい。また、レビューはPS4版のバージョン1.02でのプレイをもとにしたものとなる。

アニメのストーリーの主軸が味わえるソロプレイモード

鬼になってしまった妹の禰豆子を人に戻すために、炭治郎が敵の鬼と戦っていくのが『鬼滅の刃』のストーリーの主軸だ。原作漫画やアニメだと炭治郎の家族が殺され、禰豆子が鬼になってしまうシーンからストーリーが始まる。

一方の「ヒノカミ血風譚」では炭治郎が岩を斬る修行をするシーンから始まる。ゲーム開始直後に、炭治郎の師匠・鱗滝に育てられた剣士である錆兎とのチュートリアルバトルが始まるわけだ。『鬼滅の刃』は常に鬼と戦っている作品ではなく、序盤から修行も丁寧に描かれる作品。ゲームになると見ているだけのシーンが多くなりそうだが、本作のソロプレイモードはストーリーの主軸になる部分をピックアップすることで、この問題を回避している。

ゲーム冒頭の岩を斬るシーン。漫画やアニメだとすぐには登場しないシーンだ。<br />
ゲーム冒頭の岩を斬るシーン。漫画やアニメだとすぐには登場しないシーンだ。

ストーリーはダイジェストのようになってしまうが、ゲームを進行していくと「想いの欠片」と呼ばれるアイテムが入手できる。こちらは章の選択画面にて、回想シーン形式で物語を振り返るもの。禰豆子が鬼になってしまうシーンや冨岡義勇と出会うシーンなど、鬼とのバトルや探索があるわけではないシーンは「想いの欠片」で回想する形式で味わえるようになっている。

全体的にサクサク進めるテンポの良さがあり、上手く『鬼滅の刃』をゲームに落とし込んでいると言えるだろう。さすがは『NARUTO -ナルト-』が原作の「ナルティメットストーム」などのキャラクターゲームで知られる、サイバーコネクトツーが制作した作品だ。

探索パートでは町のシーンも。<br />
探索パートでは町のシーンも。

ソロプレイのゲームの流れは、ムービーシーン → 探索パート → ザコ鬼とのバトル → 探索パート → ボス鬼とのバトルとなっている。探索パートでは浅草、那田蜘蛛山といったアニメで印象的だった場所を歩けるのはたのしいが、マップは狭い。

さらに問題は、探索パートにて面倒な場所に「想いの欠片」やキメツポイント(褒賞を解放するためのポイント)などの収集要素がある点だ。マップを開けばこれらの場所はすべて表示されるし、鬼の匂いを探知して正解ルートを表示させる機能はある。しかしながら、探索パートのプレイは作業に近くなってしまっている。

マップを開けば、アイコンですべての収集要素や目的地が表示される。<br />
マップを開けば、アイコンですべての収集要素や目的地が表示される。

開発側もこの問題に気がついたのか、第4章(全8章)あたりからはかなり目立つ位置に収集要素が配置されるようになってきたと感じられた。これは、もはやほとんど「探索」ではない。第4章までは、探索パートによってストーリーへの集中が阻害されることがあった(大ボスの鬼舞辻󠄀無惨を追う場面で、はたして脇道にそれて探索するだろうか)。第4章以降はこういった問題は発生せず、ストーリーに集中できる。探索パートについては成功しているとは言えないだろう。

炭治郎は鼻が利く設定なので、鬼の匂いを探知できる。ゲームでは正解のルートを示している。<br />
炭治郎は鼻が利く設定なので、鬼の匂いを探知できる。ゲームでは正解のルートを示している。

グラフィックや演出のアニメ再現度が高すぎる

3Dモデリングで我妻善逸の顔芸が再現されている。<br />
3Dモデリングで我妻善逸の顔芸が再現されている。

バトルについては後述するとして、キャラクターゲームとしての魅力についてまずは語っておく。本作のいちばんの魅力は、アニメ再現度が高すぎるところだ。『鬼滅の刃』は過酷な世界観だが、キャラクターどうしのコミカルなかけ合いやギャグ顔も漫画やアニメの魅力である。

ゲームは3Dモデリングによって描かれているが、アニメで見られたギャグ顔も再現されている。とくに我妻善逸のギャグ顔やキャラクターモーションはアニメそのものと言える再現度だ。あまりにもアニメすぎるためアニメそのものだと思ってしまって、あまり凄さを感じさせなくなるほどである。

ゆっくり怯えながら動く善逸を操作するパート。<br />
ゆっくり怯えながら動く善逸を操作するパート。

良いものは何回だって感動できるもの。神回と称された、第1期アニメ19話のラストシーンを覚えているだろうか。そのシーンのゲームでの再現度も凄まじい。一部の伏線やカルト的な人気の「サイコロステーキ先輩」がゲームでは登場しないなどささいな不満点はあるものの、それはソロプレイの出来が良いから出てくる不満だ。

アニメ再現度が高すぎるゆえに、本作ではゲームの都合で追加されたと思われるようなごくわずかのオリジナルシーンしか存在しない(メニューから選択式でオリジナルの鬼と戦うサイドクエストのようなものもある)。それでも、ゲームならではのサプライズシーンは用意されている。ネタバレになるので詳しくは語らないが、このシーンは『鬼滅の刃』のファンなら間違いなく感動するものになっている。

炭治郎役の声優・花江夏樹がアフレコ実況する動画。アニメ第19話のラストシーンも含まれている。

ソロプレイのバトルもアニメを再現

本作のバトルは3Dの狭い空間上でおこなわれる。ボタン連打による通常攻撃とダッシュ(回避)、ジャンプ、ガードと3Dコンボアクションとしてシンプルな作りだ。技についてはPS4/PS5であれば△、左スティック、R1を組み合わせてゲージを消費して発動できる。ほかにも大迫力の奥義や開放などといったものがあるが、基本的な戦闘システムについては試遊レポート記事も見てほしい。

上記の試遊レポート記事やこれまでのプロモーションを見ていると、本作のバトルは対戦格闘ゲームのように思えるかもしれない。だが、実際のところソロプレイのバトルは3Dコンボアクションゲームのそれに近い。強力な鬼とさまざまなシチュエーションで戦い、攻撃パターンを探って攻略していくのだ。

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画像は公式サイトより。

上記の画像のように、鬼の攻撃には基本的に赤いラインが表示されて攻撃の予告が入る。これをしっかりと見ながら、回避して攻撃していくのがソロプレイのバトルの基本となる。ダメージバランスについてはそこまでシビアではなく、回避やガードがかなり重要にはなるが『DARK SOULS』など「ソウルライク」ジャンルなどと比較したらかなりやさしい作りである。

筆者は原作漫画を読んでいたとき、鬼の攻撃方法と炭治郎の攻略方法について「ゲームっぽい」と思っていた。ゲームでも毬を投げて戦う鬼の朱紗丸戦では「矢印」が可視化されるし、鼓を打つ鬼の響凱戦でも原作通り部屋が回転していく。ゲームにおいても『鬼滅の刃』そのものと思えるバトルが展開するのが本作の特徴だ。メインのバトルで使用するのは主に炭治郎だが、善逸や伊之助を操作するバトルなどのバリエーションもある。

部屋がどんどん回転していく、鼓屋敷でのバトル。<br />
部屋がどんどん回転していく、鼓屋敷でのバトル。

ゲームの難易度についてはラスト付近で2回コンティニューした程度。それ以外にギリギリの戦いもあったので、適度な緊張感でプレイできる。コンティニューは体力最大の状態で何度でもできるが、その状態ではバトル後の評価が落ちてしまう仕様だ。ソロプレイをクリアするだけなら簡単だが、Sランクを狙う場合はやり込みが必要になる。総じてバトルは原作アニメありきであり、「あのバトルを体験してみたい」と思えるファンなら満足できるだろう。

ボス鬼とのバトルのクライマックスはQTEで表現。漫画やアニメでおなじみの「隙の糸」(急所が見える、炭治郎の特殊な感覚)も登場する。<br />
ボス鬼とのバトルのクライマックスはQTEで表現。漫画やアニメでおなじみの「隙の糸」(急所が見える、炭治郎の特殊な感覚)も登場する。

バーサスモードはパーティー対戦アクションとしては良作

バーサスモードについては、ラウンド3本先取で対戦格闘ゲームのようなシステムになる(「共闘キャラ」と一緒に戦う2vs2方式)。先に言っておくが、あなたが本作をガチ勢の目線でプレイしたいと思うのならばオススメしない。本作はバトルでやれることが少なく、実力の天井は低いと思われる。世界ランキングを見ていても強いキャラクターには偏りがあるようで、バランスがいいとは言えない。

だが、本作はパーティー対戦アクションとしては良作だ。技は3つでコマンドは簡単、コンボもほかのキャラクターに応用できるので、すぐにそれなりの戦いができるようになるだろう。奥義のアニメ再現度は素晴らしいし、鱗滝さんvs煉獄さんのようなゲームでしかできない戦いができるのもファン目線ならうれしい。

キャラの再現度で言えば、1つの型を極めた善逸はゲームでも「壱ノ型 霹靂一閃」を多用して戦う(無敵のカウンターとなる「空転」と呼ばれる技もある)。善逸は寝ていると本来の力が発揮されるので、ちゃんと寝ている状態で戦うところも再現されている。毒を使って戦う胡蝶しのぶ、突進技の「猪突猛進」がある伊之助など、キャラの設定とゲーム上での性能の一致は満点だ。

本作の駆け引きはガードと掴み技、ガードクラッシュなどによっておこなわれる。ガードを崩すのはなかなか難しく、お互いに攻撃を振りあうシンプルな差し合いがたのしめる。共闘キャラを呼び出す「共闘技」(共闘ゲージ50%消費)なども駆使してガードを崩していこう。

SNSでは無限コンボや10割コンボなどと話題になっていたが、実際のところ本作ではコンボ数は時間によって上限が決まっている。大ダメージのコンボもゲージを消費して「開放」状態にならなければいけないし、共闘ゲージを100%消費すれば緊急離脱ができるようになっている。本作は1ミスでいきなり終わるようなゲームではない(ミスを積み重ねると、一気に持っていかれる)。バーサスについては噂されるほどぶっ飛んだ作りではなく、かなり無難でシンプルなゲームになっている。

本作ではコンボに制限時間が設定されており、時間が経過すると強制的にコンボ終了となる。<br />
本作ではコンボに制限時間が設定されており、時間が経過すると強制的にコンボ終了となる。

良くも悪くもアニメを再現するゲーム

まとめると、「ヒノカミ血風譚」は『鬼滅の刃』のファンならマストプレイなゲームになっていた。しかしながら、本作は良くも悪くもアニメを再現するゲームであり、アニメ以上の作品にはなっていない。

『鬼滅の刃』は物語やキャラそのものが素晴らしく、筆者はここ1カ月で「無限列車編」について漫画、劇場版アニメ、ゲーム、TVアニメ版と見てきたが何度だって感動できている。アニメに負けない感動をゲームでも必ず味わえるはずだ。

筆者の好きなキャラである時透無一郎。残念ながら彼は使用可能キャラではない。<br />
筆者の好きなキャラである時透無一郎。残念ながら彼は使用可能キャラではない。

細かい不満点を挙げておくと、アップデートで今後追加予定だが、本作の使用可能キャラは18人(6人は公式スピンオフ「キメツ学園」仕様のコンパチキャラ)と少ない。しかもキャラは最初から全員使えるわけではなく、ストーリーをクリアするかキメツポイントを使って解放する方式になっている。

キャラ数についてはアニメを再現するゲームの都合上、アニメでまだ戦っていないキャラをゲームで戦わせるわけにはいかなかったのだろう。筆者は「柱」(鬼殺隊の幹部たち)の1人である時透無一郎が好きなのだが、彼がアニメで戦うのはまだまだ先になるはず。ゲームで彼が登場するには、次回作を待たなければならないかもしれない。むしろ、アニメではほとんど戦っていない冨岡義勇などが使用可能な点に筆者は感謝したいと思った。総合的に、本作が現時点で開発できる『鬼滅の刃』のゲームの最高峰なのは間違いないだろう。

『鬼滅の刃』のファンならマストプレイなゲームで、ファンならば不満点も許容できるだろう。バーサスモードに関してはパーティー対戦アクションとして考えれば、十分な出来である。しかしながらアニメを再現する都合上、アニメではまだ戦っていないキャラを出せないという問題を抱えており、キャラ数が少ない。探索パートにも問題があり、全体的には『鬼滅の刃』のファン向け以上の作品にはなっていない。それでも、現時点で開発できる『鬼滅の刃』のゲームの最高峰なのは間違いない。