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火曜日, 11月 24, 2020

最高の初めてをもたらす『DEATH STRANDING』超個人的レビューで伝えたいこと | WHAT’s IN? tokyo

前回の記事で書いたように、『DEATH STRANDING(デス・ストランディング)』は自分で遊ぶことでしか全貌をつかめないゲームだと思っている。そして、もし遊ぶのであれば、極力ネタバレを見ない状態で遊んでほしい。本作を遊んだプレイヤーには僕と同じような考えを持った人も多いようで、ネット上ではゲームのネタバレは控えめだ。これは情報の拡散が早い今の時代において、好ましい形のように思える。それゆえ未プレイの人が「デスストってどうなの?」とネットを漁っても、あえて輪郭をぼやかした状態で語られていることが多いため、結局はよくわからないということになる可能性もある。そして行き着くのが、ネガティブな意味を含んだ“雰囲気ゲー”ではないのかという誤解だ。今回の記事ではネタバレを極力避けつつ、筆者の感じた“ゲームとしての面白さ”を紹介していく。

文 / 浅葉たいが


『DEATH STRANDING』は雰囲気ゲーではない

“雰囲気ゲー”とはプレイヤーのゲームレビューなどでたまに目にする言葉だが、これには「雰囲気は良いが、最後まで遊んでみた結果物語は淡泊なものだった」というネガティブな意味が含まれていることが多い。未プレイの人からすれば、『DEATH STRANDING』発売まえの洗練されたグッズ展開、スター俳優の起用、そして戦うのではなく“繋がり”を求め“配達する”というのだから、どんなゲームなのかピンとこないという人も多いだろう。ただ配達するだけで本当に楽しいのかという疑問はもっともで、ムービーが長いという事前情報も合わされば気になるのも無理はない。そのうえ僕みたいなひねくれた人は、「遊んでみないとわからないよ」なんて言っているわけだ。

ネタバレを避けつつ明言しておくと、本作のプレイフィールは独特のものでありながらもゲームの持っている楽しさを放棄しているわけではない。ひと言に配達とはいっても、そのなかにはさまざまなエンタテインメントが詰め込まれている。まず、配達の依頼を受けた時点で持っていくアイテムをどうするか、ルートをどうするかという思考が始まる。段差が多そうな場所が続くから梯子をたくさん持っていきたいが、サムの持てる荷物には配達物を含めて限りがある。ここでまず、“何が必要か、何が不要か”というシミュレーションを頭のなかですることになる。シミュレーションどおりに荷物が配達できたときは爽快であるが、大抵の場合はすんなりとはいかず時雨やBTの邪魔に遭うこともあるのだが、こうした予想だにしない難所を突破できたときには凄まじい達成感がある。

サムのできることが増えていくのも充実したゲームプレイに繋がっている。オープニングではサムが乗っていたバイクが故障し、荒野に投げ出される。そのあとは自分の足を使っての配達を経て、“梯子”や“ロープ”などのツールを使ったショートカットが解禁され、荷物をけん引できる“フローター”、大量の資材などを積載できる“トラック”なども使えるようになる。そしてついには“道”を作れるようになるというわけだ。さらには、逃げるしかなかった敵に対して“戦う”という選択肢が生まれてくるのも面白いところだろう。配送において戦闘はメインの要素ではないが、選択肢が増えることで遊びの幅が広がり、より楽しくなるのは間違いない。RPGのようにサムの配達人としての成長を楽しむと同時に、ここにはカタルシスの解放もあると感じた。ゲーム序盤のとれる行動の少ないサムを操作していると、ユーザーはやや不自由さを感じる。しかしそこに梯子やロープなどのツールを使うことで、不便から一気に脱出できる。このときの解放感が忘れられず、次なる便利なツールを求めて探索を続けるというのが中盤のモチベーションとなった。

先の記事ではお礼を言われる気持ちよさ、そのお礼から世界をより楽しむためのTIPS的な情報がもたらされるため止めどきが難しいと述べたが、それだけではない。コントローラーを握ってプレイして“楽しい”と思う要素がしっかりと詰まっている。筆者は現在トロフィーコンプリートを目指してゲームクリア後もプレイを続けているが、まだまだ飽きることがない。サムがさまざまな行動を行えるようになったうえ、ゲームのセオリーもある程度理解してきたので効率的な配送もできるようになったし、あえて困難な配送をゆったりと楽しむということもできる。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲物語が進むにつれて、サムの持てる荷物が増えていく。移動手段や運送手段が充実していくことで、プレイヤーとしては“遊べる要素”が増えることになる

さらに未プレイの人が気になるであろう“デス・ストランディング”という現象、サムとクリフの関係、BBの存在など、さまざまな謎はどう着地するのかという点についても“想像していた以上に多くのことが明らかになる”と伝えておきたい。荒廃したアメリカを再び繋ぐことを託され、カイラル通信という通信技術の拠点に配達物を運ぶという旅で得るものはとても多い。最初は依頼と割り切って配達任務を続けるサムがBBを装着して旅をするうちに、彼自身が不信を抱いていた“絆”の可能性を感じるようになる。そして、彼が人と人の間を配達という行為で繋ぐことで、知らず知らずのうちに他者の絆をも繋いでいくことになる。そんな彼が決断のときにどういった行動をとるかが大きな見どころになるだろう。

謎が謎のまま終わるゲームではなく、“俺たちの戦いはこれからだエンド”でもない。ちゃんとしたエンディングがプレイヤーを待っている。語るとネタバレになってしまうので保障が難しいが、11月28日に発売された小説版『DEATH STRANDING』(講談社文庫)が上下巻になっていることを見れば、本作のストーリーがどれほど重厚なものかわかるだろう。ちなみにこの小説はゲーム内の物語を描いたものだが、同じ物語をベースにしていながらメディアが変わるとこうも体験として違うのかと驚かされる作品だった。ゲーム版ではオープンワールドを歩きながら、クリアまでの必須イベントとプレイヤーそれぞれの寄り道を楽しんでいくが、小説はメディアの特性上一本道だ。小説を読むと誤解や飛躍しすぎた考察をしていた部分があることがわかって、答え合わせ的な体験をすることができた。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲サムと共に旅をすることになる謎の赤ん坊BBについても、物語の後半で“真実”が明かされる

絶望に抗う世界で見つける遊び心

『DEATH STRANDING』の世界には、思わず立ち止まってしまう場所がいくつもあった。山を登ったあとに眼下に広がる大地、雪化粧された大地に突如現れる渓谷、荒廃した台地には似つかわしくない謎の施設。こうした壮大な世界構築を見ていると、完成されたオープンワールド型のゲームであることがわかる。世界が美しいことはオープンワールドゲームにとって必須の要素でもあるのだが、そのハードルは高い。それをいともたやすく乗り越えてくる本作の高い表現力に驚かされた。荒廃した世界ということで人のコミュニティや都市といったものは大規模には描かれていないが、絶景の描写にはコントローラーを持っているプレイヤーに“ここを通ってみたい”と思わせる凄味がある。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲絶景を求めてどんどん高い位置に昇りはじめるとゲームクリアが遠のいてしまう

それでいて遊び心も忘れない。僕がこのゲームを好きなのは、作中にスパイスとして使われている「くすっ」と笑える要素がとても魅力的だからでもある。一見気取ったゲームに見えるけれど、蓋を開けると本作はとてもやさしいゲームである。前回の記事で“のんびりとした”という言葉を使ったが、“デス・ストランディング”の謎を追い求めずに、ただオープンワールドをゆったりと楽しめば、つい笑顔になってしまう場所やシーンがたくさんあるのだ。

たとえば、最近SNSで話題になった”いいね岩”について。これは本作のとある場所にある岩なのだが、その形が“いいね”のサインを真似ているかのような形になっている。この岩が”いいね岩”と呼ばれるようになったのは、ユーザーが「“いいね”をくれる岩を見つけました」とネットに投稿したところ、本作の制作のキーマンである小島秀夫監督が「開発では”いいね岩”と呼んでいます」と紹介したことに由来する。つまりこの岩は偶然ではなく、開発の遊び心によって“いいね”の形になっている。本作の感謝の気持ちは“いいね”の数によって表されるため、ゲーム内におけるメタ的なオブジェクトになっているというわけだ。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲サムの前方に見えるのが通称“いいね岩” 。手の形になっていることがわかる

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲舞台はアメリカだが、突然鳥居が登場して驚かされた。思わずスクリーンショットを撮りたくなる光景が数多く用意されている

イベントもシビアなものばかりではない。筆者はゲームファンでありゲームライターの端くれのようなことをやっているので、ファミ通グループ代表の浜村通信氏をモチーフにしたNPCが出てきたときには頗る驚いた。氏をモチーフにしたコレクターの配達依頼を達成するとお礼のメールが届き、「“ハマムラ通信”を創刊した」と報告してくれる。「浜村さん出てきちゃったよ」と思っていたら、用意されているシナリオもその人のパーソナリティを現わすユニークなものになっているのだから驚きだ。メールにはレポート、クロスレビューなど週刊ファミ通を知る人であればドキッとするようなフックも多数。こうした形で現実世界との接点を作っているのも実にユニークな手法だと感じた。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲ハマムラ通信は情報誌として描かれている。現実世界との“繋がり”を感じる設定だ

また、何もなさそうなところで何かが起きるのも本作の面白いところだろう。温泉に入った状態でしばらく操作をせず入浴シーンを見ていると、サムがザ・ドリフターズの「いい湯だな」を歌い始める。音声設定を英語にしていると、ノーマン・リーダスが「ババンババンバンバン」と歌い始めるのだからたまらない。しかも同行者がいる場合には、その同行者まで歌い始めたりする。荒廃した世界のところどころに開発の遊び心が潜んでいる。そのスポットやシーンだけを切り出してみれば、ハードな世界設定にミスマッチなものに見えてしまうかもしれないが、地続きとなった物語で見るとこれらの遊び心溢れるイベントに深く共感してしまう。荒廃した世界でのジョークやエンタテインメントは人々の生きる活力になることがあり、その世界をサムとして探索しているプレイヤーにも清涼剤のような感覚をもたらすのだ。

DEATH STRANDING エンタメステーションレビュー

▲温泉に到着。温泉に入ってしばらくくつろいでいるとサムが歌い始める。その歌はなんと、ザ・ドリフターズの「いい湯だな」

配達人が世界を繋いでいくというテーマと、戦闘に頼らないプレイフィールをよくまとめあげたものだと驚嘆している。『DEATH STRANDING』が発表されたのは2016年のE3(世界最大のゲームイベント)でのこと。開発元のコジマプロダクションは2015年12月末に立ち上がっているが、いくら小島監督とはいえ新しく立ち上げた組織で”スムーズに遊べる作品が出てくるのか”というのはいちゲームファンとしての疑問だった。最近では大きな組織から独立したクリエイターの作品が話題になることも多いが、粗製乱造の傾向も少なくない。しかし、その予想は良い形で裏切られ、オープンワールドの持つ自由度をしっかりと備え、さらに独自のプレイフィールを持つ作品が飛び出してきた。

今までにいろいろな作品で長文のレビューを書いてきた。ときには点数をつけるような形式のものにも参加した。レビューをするときに指針になるのは、それまでに遊んできた作品であることがほとんど。文章には滅多に書かないが、過去の名作と比べて優れているか劣っているかを意識していなくても比べていることが多い。職業病というやつだろう。そんな癖があるからか、稀に自分が過去にプレイしてきたどの作品とも重ならない不思議なゲームに出会ったとき、僕は戸惑ってしまう。『DEATH STRANDING』は僕にとってまさしく“初めて”が溢れるゲーム体験となったので、個人的な感想を多く含む文になってしまった(ちなみに遊び始めた最初の頃は、ユーザーインターフェースが使いにくいなどとゲームライター風の感想もいくつかあったのだが、中盤を超えてからはそれにも慣れ、この斬新なゲームにはこのユーザーインターフェースを選んだのだとさえ思うようになった)。

本稿の結びとして伝えたいのは、普通のオープンワールドゲームだろうと思っている方は、騙されたと思って本作を手に取ってみてほしい。そして、ゲームをあまり遊ばないという方(ここを読んでいる方にはほとんどいないかもしれないが)は、とてもやさしく遊びやすいゲームなのでまずは触れてみてほしい。難しすぎると感じたときは、ゲーム内メニューから難度を下げられるのでご安心を。

フォトギャラリー

DEATH STRANDING ロゴ


■タイトル:DEATH STRANDING

■発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント

■対応ハード:PlayStation®4

■ジャンル:アクション

■対象年齢:17歳以上

■発売日:発売中(2019年11月8日)

■価格:通常パッケージ版・ダウンロード版 各6,900円+税


『DEATH STRANDING』オフィシャルサイト

©2019 Sony Interactive Entertainment Inc. Created and developed by KOJIMA PRODUCTIONS.

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