単なる移植ではない。PSVR1のタイトルをPSVR2に対応させるVR開発者たち –

0
6

ローンチタイトルから黄昏リリースまで,開発者が旧PlayStation VRタイトルを次世代機に移植するメリットや強み,コストについて語る

単なる移植ではない。PSVR1のタイトルをPSVR2に対応させるVR開発者たち

 PlayStation VR2の発売まで1か月を切り,悪い予感がある。

 ハード自体の第一印象は良好だが,高額な価格設定や,発売が決定している37タイトルのうち,PSVR2用の新作独占タイトルが「Horizon: Call of the Mountain」と「The Dark Pictures: Switchback」の2つしかないことの不安が拭えない。

 既存タイトルのVR2への移植のうち,「Song in the Smoke: Rekindled」「Moss」「Moss: Book II」「Pistol Whip」「After the Fall」「Tetris Effect: Connected」などはPSVR1で遊べるゲームのリマスター版であり,これにはPSVR1のローンチタイトル「Rez Infinite」も含まれる。もちろん,新ハード向けに旧作をリマスターするのは目新しいことではないが,PS5とXbox Series X|Sの1年目に,新作独占タイトルが不足した状況で,開発者が新ハードの特徴を生かして既存タイトルをブラッシュアップしたのと同じに感じられる。

“素晴らしいことで,PS5の完全版を作るための口実となります”
Mark MacDonald氏,Enhance

 しかし,PS5の所有者はそれらのアップグレードを嬉しいボーナスとして受け取れるが,ヘッドセットはVR1ゲームとの後方互換性がないため,VRゲームをVR2にアップグレードすることは必須だ。PS4のゲームがいつからプレイできるかは不明だが,「バイオハザード7」「Gran Turismo Sport」「Rez Infinite」などのVRモードのあるPS4ゲームは新しいヘッドセットでは動作しないだろう。

 VR開発者は,旧プラットフォームに取り残されないよう,旧作をVR2に移植しなければならないことを,どう感じているのだろうか。「Moss」シリーズのデザインディレクターJosh Stiksma氏は,インストール済みのVR1タイトルをVR2でロードできないのは残念かもしれないが,2つのヘッドセットが根本的に異なると評価している。

 「可能な限り,常にプレイヤーを一緒に連れていきたいと考えていますが,新ハードには技術的な変更が多く含まれます」と彼は言う。「明らかに大きな変化は,1つのDUALSHOCKではなく,ハンドトラッキングコントローラを2つ使用することです。根本的に,それに対応するために入力を変更する必要があるのです」

 実際,「Moss」はPS5のVR1ヘッドセットとの互換でさえも簡単ではない例で,DualSenseコントローラには存在しない,PS4のDUALSHOCKコントローラのライトバーを使うように設計されている。

 しかし,この状況は開発会社によって異なる。Vertigo GamesのCo-opシューター「After the Fall」は,単にVR2に対応するだけでなく,VR1のプレイヤーを含むクロスプラットフォームプレイにも完全対応している。

 2021年末(ソニーがVR2を正式発表する1か月前)に先史時代のサバイバルゲーム「Song in the Smoke」をリリースした,17-BitのCEO兼クリエイティブディレクターJake Kazdal氏にとっては,チームが思い描いていたゲームの理想を叶えるチャンスとなった。モーションコントロールに旧式のPlayStation Moveを使用していたため,VR2のSenseコントローラにあるコントロールスティックがなく,VR1の制約に阻まれていたのだ。

 「文字通り,行きたいところを指差して,加速ボタンを押せば移動できます」と彼は説明する。「制約の中でも,チームはオリジナル版にかなり誇りを持っていたと思いますが,デュアルスティックによって非常に良くなります。これは完全に別のゲームです」

PlayStation VR2の新しい入力は,PSVR1のゲームの単純移植ができないことを意味する
単なる移植ではない。PSVR1のタイトルをPSVR2に対応させるVR開発者たち

 EnhanceのプロデューサーMark MacDonald氏は,VR2が後方互換性を持たないことに,ある程度は満足していると付け加えた。

 「素晴らしいことで,PS5の完全版を作るための口実となります」と彼は説明する。「『Tetris Effect: Connected』や『Rez Infinite』のようなゲームでは,解像度やフレームレートといった“表面的な”要素が重要なので,本当に嬉しく思っています。音と映像の同期や,その鮮明さが極めて重要で,体験の大きな部分を占めます」

 これは,他のハイエンドPC用VRヘッドセットに移植した時と同様に考えられ,例えば「Moss」を他のプラットフォームに移植する際,Polyarcでは既に2つのハンドトラックコントローラに対応する設計を必要とした。全体的なコンセンサスは,素早い移植でVR2の所有者にVR1で遊んだゲームを再びプレイさせるのではなく,ヘッドセットの新機能を活用した最高のバージョンをプレイさせるというものだ。

“PSVR2版はクリーンで,単一のものなので,以前はできなかった方法でハードウェアを徹底的に活用できました”
Jake Kazdal氏,17-Bit

 Kazdal氏は,「当社は,ハイエンドPCからQuestに至るまで,Unreal Engineで1つのビルドを出力しており,すべてが同じバスケットから出てくるので,すべての異なる設定を考慮する必要がありました」と続ける。「しかし,PSVR2版はクリーンで,単一のものなので,以前はできなかった方法でハードウェアを徹底的に活用できました」

 VR2の専用機能であるアイトラッキングは,実際に目で見たものだけをレンダリングすればいいので,チームは「Moss」にダイナミックな影を追加し,キャラクターを世界の一部だと更に感じられるようにできた。一方,「Tetris Effect: Connected」では,目を閉じることで,ゲーム独自の禅の“フロー状態”機能であるゾーンに入ることができる。

 ハプティクスが改善されただけでなく,開発者はアダプティブトリガーの活用にも熱心で,当然ながら「Pistol Whip」のリズムベースのガンプレイに適している。「私たちのチームは,PSVR2のより広い範囲と感度に合わせてハプティクスを調整し,新しいヘッドセットのハプティクスはプレイヤーがヒットした時にもう少し衝撃を与えます」とゲームディレクターのTyler McCullochは説明する。「アダプティブトリガーは,クリップが満杯の時と空の時で異なるレベルのトリガー抵抗を加え,よりリアルな発射振動を提供し,リロードする時にはっきりとした満足のいくクリック感を与えます。素晴らしいことです」

 アダプティブトリガーについて,Stiksma氏は「Moss BookのIとII両方で,どれだけ多くのインタラクションがあるか考えてみると,その機能を使って実際に達成できる質感や感触がたくさんあります。これで遊んでみると,非常に素晴らしく,とても新鮮に感じるはずです」と付け加える。

Senceコントローラの触覚コントローラによって,PlayStation VR2のシューティングゲームをよりリアルに感じられる
単なる移植ではない。PSVR1のタイトルをPSVR2に対応させるVR開発者たち

 しかし,既存のプレイヤーが再び購入するほどの新しさを感じられるのだろうか。開発者にとっては,コストを正当化するために,VR2の機能をすべて活用しなければならないというプレッシャーがあるとも言える。新世代のコンシューマ機では無料アップグレードが主流だが,Polyarcは「Moss」と「Moss Book II」をフルプライス(他のVRプラットフォームと同価格)で販売することを決定した。EnhanceがPS4版「Rez Infinite」と「Tetris Effect: Connected」の購入者に割引価格を提示したにもかかわらず。

 「触覚フィードバック,グラフィックスの向上,視野,アイトラッキング,コントローラ設定など,より良い没入感を得るために,ゲームデザインを根本から見直し,プラットフォームに最適化しました」とPolyarcのパブリッシングディレクターLincoln Davis氏は説明する。「私たちは小さなチームですが,このような世界を作り続けるために,無料提供はできません」

 MacDonald氏は付け加える。「これらの新バージョンの開発には,多くの時間を費やしました。時は金なりです。内部テストやプラットフォームテストも考慮しなければならないので,最終的にはおそらく人々が思っているよりもずっと多くの時間と労力を費やしています」

“私たちは小さなチームですが,このような世界を作り続けるために,無料提供はできません”
Lincoln Davis氏,Polyarc

 Cloudhead Games,Vertigo Games,17-Bitなど一部のデベロッパは現在も無料アップグレードパスを提供しており,ソニーはこれを促進する手助けをしていた。「After the Fall」のプロデューサーであるAlastair Burns氏は「PSVR1のプレイヤーがゲームとコミュニティにコミットしてくれたことに感謝し,無料アップデートを決定しました」と述べている。

 Kazdal氏は,「Song in the Smoke」が他のプラットフォームと比べてVR1で最も売れなかったのは,VR1の黄昏時にリリースしたからだと認めている。新たなVR2版「Rekindled」はより多くの新ユーザーを取り込むことが期待されている。

 たとえDavis氏が,VR2はVR1と別のプラットフォームであり,Meta StoreとSteamの関係と同様だと理由付けしても,既にこの新しいヘッドセットにかなりの金額を費やしているプレイヤーにとっては,同じゲーム機で既に持っているゲームのための出費は,間違いなく残念なことだ。とはいえ,ローンチラインアップに含まれるだけで,新たなユーザーを獲得できるのは,開発者にとって大きなメリットだ。

 「現在は,より多くの人々が試行錯誤を経た実績のあるタイトルをプレイできます。発売時に質の高いラインアップが揃えば,VRに興味を持つゲーマーが更に増えるでしょう」とBurns氏は語る。

 Stiksma氏は付け加える。「ローンチタイトルが,私たちを含め,VRの世界に人々を迎え入れる強い存在になることを願っています。そして,ソニーは新作を出すことで,このプラットフォームの良さをさらに証明できます」

 しかし,「Horizon」以外のファーストパーティスタジオによるVR2独占タイトルが発売されるまでは,ソニーが隔たりを埋めるために「Blood & Truth」や「Astro Bot: Rescue Mission」といった評価の高いVR1タイトルのリマスターを出すかどうか考えるのは簡単だろう。昨年の「Horizon: Forbidden West」のアップグレードパスをめぐる論争に続き,ソニーからのアップグレードが無料になることはなさそうだ。