[CEDEC+KYUSHU]「ELDEN RING」の秘訣は“おもてなし術”にあり。自由に探索できるオープンフィールド,個性的な敵のモーションの作り方

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 アクションRPG「ELDEN RING」PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Xbox One)では,広大なフィールドの探索と個性的な敵の戦いを楽しめるが,こうした体験はクリエイターの「おもてなし術」で作られているという。2022年11月12日に福岡県九州産業大学で行われた「CEDEC+KYUSHU 2022」では,フロム・ソフトウェア 福岡スタジオのチーフ3Dグラフィックアーティストである宮内 淳氏と,ビジュアルアーティスト/モーションデザイナーの森田鉄平氏が,講演「狭間の地へようこそ!『ELDEN RING』における オープンフィールドおもてなし術」で,その秘密を語った。

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フロム・ソフトウェア 福岡スタジオのチーフ3Dグラフィックアーティストである宮内 淳氏(写真左)と,ビジュアルアーティスト/モーションデザイナーの森田鉄平氏(写真右)
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「おもてなし術」で魅力的なフィールドと敵を作り出す

 「ELDEN RING」は高難度のアクションRPG,いわゆる“死にゲー”を得意とするフロム・ソフトウェアの最新作だ。プレイヤーは「狭間の地」を探索し,さまざまなロケーションやダンジョンを見つけ,個性的な敵と血みどろの死闘を繰り広げながら攻略していく。
 文章にすると簡単だが,「探索するうちに面白そうな場所(ダンジョンなど)を見つける」「個性的な敵と戦う」というのは,ゲーム体験の根幹となる部分が成立しないとプレイして面白いものにならない。しかも,舞台となる狭間の地はオープンフィールドであり,プレイヤーが気になった場所を自由に探索できる。これまでフロム・ソフトウェアが手がけてきた“死にゲー”において,攻略の道筋が決められていたのとは対照的だ。
 オープンフィールドとなると,敵はもちろんフィールドも印象的なものでなくてはならない。そこで,「プレイヤーに見つけてもらう」「プレイヤーの記憶に留めてもらう」ための取り組みが,これまで以上に重要になる。
 プレイヤーが自由に探索でき,そこに新しい発見があり,景観には飽きない工夫を凝らし,既視感のない斬新な戦闘体験ができる。こうしたプレイを実現する取り組みについて,宮内氏は多彩な変化や刺激でプレイヤーをもてなす「おもてなし術」と表現する。
 今回の講演では宮内氏がマップ作り,森田氏がキャラクターのモーション作りにおける「おもてなし術」を紹介した。

フロム・ソフトウェアの過去作。攻略の順番はある程度決められている
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「ELDEN RING」では,プレイヤーが自由に探索を進められる。いきなり強大なボスに遭遇することも起こり得る
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プレイヤーが自由意志で探索でき,ゲームを印象的にするフィールド作り

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 「ELDEN RING」のオープンフィールドは,プレイヤーが長時間探索することになる。そのため,プレイヤーを退屈させることなく重要な場所へ誘導する「変化と発見のあるフィールド作り」がテーマとなった。

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 オープンフィールドにおいて,その体験を面白いものにするためには特徴をつけていく必要がある。こうしたフィールドの特徴化は(エリアコンセプト),(景観バリエーション),(退屈軽減要素)の3段階となっているそうだ。大きな区切りとしてエリア毎にテーマカラーを変え,エリアの中でも景観にバリエーションを付け,さらに細かな見た目の変化などで退屈を軽減しているというわけだ。

 「大」に当たる取り組みでは,ストーリーの区切りとなるタイミングでマップを5つのエリアに分け,それぞれテーマカラーや構成要素を変えている。「ELDEN RING」を始めた時に「マップが全体的に緑色っぽいな」と感じた人も多いと思うが,これがテーマカラーである。そしてエリアを移動すると,テーマカラーは青や赤や白に変わり,一目で変化を感じられるのである。

「ELDEN RING」のマップは,エリアのそれぞれにテーマカラーが設けられている
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ゲーム開始直後のエリアはテーマカラーが緑
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テーマカラーが青のエリア
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テーマカラーは赤で,ただならぬ雰囲気
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こちらのテーマカラーは黄
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 同じエリアの中でも変化を用意するのが,「中」の景観バリエーションとなる。例えば,同じエリアでも,湖や薄暗い森,浜辺など,エリアコンセプトに沿った形で景観が変化していく。
 そして,ミニマムな「小」の取り組みとして,退屈軽減要素がプレイヤーの周辺に散りばめられる。これは,小さな池,地形のシルエットが変わる残骸,場所によって異なる植生,アイテムを持った死体,プレイヤーが近づくと逃げていく生き物といった細かい変化だ。例えば,それぞれの池で水の濁り方に差違を付けるなどして専用の見た目になるよう配慮されている。

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同じエリアでも,エリアコンセプトに沿った景観変化がある
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退屈を軽減するための要素が散りばめられる
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アイテムを持った死体。これも退屈軽減要素だ
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 そして,オープンフィールドにおいて重要なのが「ランドマーク」だ。地形における目印であり,プレイヤーが自分の意志で探索することを促すものである。必ず通らなければならない巨大なダンジョン,必須ではないが見つけると役立つ砦や教会,バトルを楽しめる野営地や廃墟と,本作にはさまざまなロケーションが散りばめられている。
 しかし「ELDEN RING」では,プレイヤーに主体的な探索をしてほしいということで,ランドマークへ導くアイコンや矢印といったUIが出ない。プレイヤーの意志を阻害しないように慎重に,それでいて確実に誘導しなければならず,そのためにはランドマークが持つ目印としての役割が,より重要になる。
 ランドマーク自体はいろいろなゲームに存在しているものの,方角や距離を示すUIで強力に誘導することが当たり前で,プレイヤーの主体性を阻害して「アイコンを追っていくゲーム」にするという批判もある。この問題に挑んだのが,プレイヤーを主体とした探索を促すように心がけた,「ELDEN RING」の取り組みであり,野心的な部分の一つというわけだ。

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 こうしたランドマークは重要度から「大」「中」「小」に分類されており,それぞれに誘導法と誘導強度が異なっている。「大」は強大な敵が存在していて“必ず立ち寄って欲しい場所”となる。そのため,遠方からでも視認しやすいよう大きく特徴的なシルエットとし,かつさまざまな場所から見える……といった強い誘導がかけられている。ゲーム開始直後,遠方に見える巨大な城に「あそこへ行ってみたい」と好奇心を掻き立てられた人も多いと思うが,これが誘導による効果というわけだ。加えて,ランドマークへ向かう途上では,街道に舗装がされており,ルートが目に見えて分かるようにされている。

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ランドマーク「大」の一例となる城は,大きく特徴的なシルエット
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巨大な城は複数の場所から確認できる
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ランドマークへ向かう途上では,街道に舗装をして更なる誘導をかけている
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 「中」は砦や教会など,重要アイテムや商人がいる“できれば立ち寄って欲しい場所”だ。こちらは目立つようなシルエットで,風景が特に印象的となる(宮内氏曰く「キメの絵となる」)場所や,ある程度遠くからでも視認できるようになっている。「大」と「中」への誘導が同時に行われることもあるが,どちらも同じように目立たせるのではなく,「中」はやや小さめにするといった差違が付けられた。

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こちらがランドマーク「中」の一例
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遠くからでも視認できるが,ランドマーク「大」よりも小ぶり。これは優先度の関係だ
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 「小」は野営地や廃墟などの探索要素であり,“行っても行かなくてもゲーム進行に支障がない場所”である。「大」や「中」と比べると重要度が低い。そのぶん,誘導方法のバリエーションは多彩。洞窟の入り口にたいまつを置いたり,像を調べると道標の光が伸びたり,ランドマークまで幻影を歩かせるなど,変化のある誘導がなされている。

ランドマーク「小」への誘導方法はバリエーション多彩。こちらの像を調べると道標の光が伸びる
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歩く幻影についていくと,ランドマーク「小」へたどり着ける
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 まずは「大」を目指して歩くと途中で「中」が目に入り,「中」へ向かうと「小」が見つかる……となるような調整が行われているという。こうした誘導について,宮内氏は「プレイヤーの意志決定を阻害しない,緩やかな誘導」と表現するが,実際にプレイするとあちらこちらと寄り道したくなるのだから,その効果は抜群だ。

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 また「ELDEN RING」では,異なるエリアをシームレスに行き来できるオープンフィールド,ダンジョン,砦や拠点などを同時に読み込まなければならないが,メモリは限られている。そのため,できるだけ少ないメモリ消費での地形作りが志向された。少ないメモリ消費で自然な絵を作るため,例えば岩山を作るにしても,数種のリソースにスケール変化や回転でバリエーションを付けて組み合わせるといった工夫が行われている。場所によっては,わずか2種類のリソースだけで岩壁を作るようなこともあったそうだ。

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数種のリソースを上手く組み合わせて背景が作られている
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モーションで敵のキャラクター性を深掘りする

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 濃密なプレイ体験を実現するためには,マップだけでなく敵も個性的でなければならない。この講演では「個性的で未知な敵との戦闘」を目標に,従来作から数倍となる数の敵を“個性化”した取り組みも語られている。
 まずはモーションについて。「ELDEN RING」における敵のモーションは「泥臭いカッコ良さ」「殺気の演出」が基本方針となった。
 単に「カッコ良い」のではなく,「泥臭いカッコ良さ」であるのがポイントである。制作に当たって言語化された泥臭さとは「気取っておらず,飾り気がない」「生き残るために必死,手加減がない」「本能的で自然な動作」だという。単に「カッコ良い」のであれば,流麗な動きや,美しい技も含まれるが,泥臭くはない。つまり,「泥臭いカッコ良さ」とは,表現を限定するテーマでもあるわけだ。

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 例えば,本作で特に印象的なボスである「星砕きのラダーン」の場合,攻撃モーションは“一切の手加減がなく,動き始めが攻撃の予兆と分かる”ことがテーマとなった。また,待機モーションについても,比類なき強さで戦にも自信を持つという設定を反映し,“堂々と真っ向から対峙するような,大物感あふれるモーション”に。加えて,待機モーションはさまざまな動作を接続するものでもあるため,特性やキャラクターとしての格を考慮したものとなっているのだという。そして「殺気」については「手加減のない攻撃」「常にプレイヤーの方を向いている刃」と言語化し,モーションで表現することで,恐怖感と緊張感が演出されている。

「星砕きのラダーン」の攻撃モーション。“一切の手加減がなく,動き始めが攻撃の予兆と分かる”ことがテーマに
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待機モーションは“堂々と真っ向から対峙するような,大物感溢れるモーション”
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「殺気」を演出するため,手加減のない一撃は,常にプレイヤーの方を向いている
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 制作中には,敵のコンセプトを深く掘り下げていくため,ディレクターやリードプランナーからの注文に応じて攻撃モーションが追加されることもあったという。
 「ミミズ顔」については,プランナーから「呪われた存在」「強敵。恐怖を感じさせたい」「理性はあまり残っていない」というコンセプトが提示された。そして,戦闘技術を持っておらず,素手であること考慮し,こちらを踏みつけたり,頭を地面にこすりつけたり,プレイヤーキャラクターを口に含んで咀嚼するといった攻撃モーションが作られている。
 その後,さらなるホラー感を強調したいということで,新たな攻撃モーションを追加することになり,プレイヤーキャラクターの体力がない状態では咀嚼した後,さらに呑み込んで死亡させてしまうという攻撃が追加されている。

プランナーからモーションデザイナーへ要件が提示されてモーションが作られる。ここにディレクターやリードプランナーの意見を加え,さらに改良が行われる
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 「接ぎ木の貴公子」は複数の腕を持ち,「元王子としての剣技の名残」「どこか歪みがある」「理性はあまり残っていない」がコンセプトだ。一連の攻撃モーションを作ったものの,ディレクターからはOKが出なかったという。
 オーソドックスでキャラクターとしての印象が薄い動き,見た目に反して普通な攻撃範囲が問題だったのではないかということで,「虫のような気持ち悪い攻撃モーション」を多数追加することになった。「接ぎ木の貴公子」はゲーム開始直後に登場し,圧倒的な力でプレイヤーを殺し,実力がなければ容赦なく蹂躙する,本作を体現するようなキャラクターなのだという。そして「虫のような気持ち悪い攻撃モーション」は,異形の敵が多数登場する「ELDEN RING」のコンセプトを強調している。
 彼と戦って,「初手でこれなら,この後にどれだけ奇怪な敵が出てくるんだ……」と恐怖を抱いたことだろう。キャラクターのコンセプトに則った攻撃モーションがいかに大事であるかが分かる。

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 コンセプトの深掘りは攻撃モーションに留まるものではない。今回,例に挙げられたボス「接ぎ木のゴドリック」はカットシーンやNPCの会話,マップでの演出でもコンセプトを活かす取り組みが行われている。
 「接ぎ木のゴドリック」について,演出すべきコンセプトは「多数の腕を持つ異様な存在」「王としての風格」「力を欲する者」だ。「多数の腕を持つ異様な存在」という部分では,いきなり全身を映すのではなく,徐々に異様さを見せていき,最後に多数の腕を持つ全容を現す。そして,NPCの会話で異様さを暗示する。居城の一室に,多数の腕を吊すといった複合的な演出を行った。「カットシーンを含めて一連のゲーム体験とし,キャラクターを魅力的に見せる」ように心がけているのだという。

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 「王としての風格」を表現するため,当初は「接ぎ木のゴドリック」のデザイン画をベースとしてポーズを付けたカットシーンが作られた。しかし,デザイン画の影響を受けすぎて「王としての風格」が表現されているものにはならなかったため,制作は難航したという。
 最終的には大物感に振り切ったカットシーンを作り直し,王らしい毅然としたポージングで多数の腕を映し出しており,斧を真下に叩きつける際には力強い獅子の意匠を示すといった現在の形となった。

当初のカットシーンのビデオコンテ。「王としての風格」が表現されていないとしてリテイクに
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大物感に振り切った,新たなカットシーン。デザイン画とは異なるポーズだが,堂々たる風格がある
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 「力を欲する者」としての側面は,「接ぎ木のゴドリック」を表現する上で非常に重要な部分だ。彼は一見強大に見えるが,実は弱さゆえに力を渇望しており,他者の身体をバラバラにして自分の身に取り付ける「接ぎ」で力を得ている。登場時のカットシーンでは手をアップにし,竜を撫でさせた後,何かを求めるように上に向けることで異様さと渇望を表現した。その後,戦闘中には,自らの手を切断し,そこに切り落とした竜の首を“接ぎ”,パワーアップするカットシーンを挿入している。

登場時のカットシーン。上に向けた手で異様さと渇望を表現
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戦闘の途中には,自らの手を切断して竜の首を繋ぐカットシーンが挿入された
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 背景とキャラクターに関するこれらの取り組みに関し,宮内氏は「常に刺激に満ちた冒険を届けるために,一つ一つに丁寧に向き合うことをこころがけた」と総括し,講演を締めくくった。
 容赦ない高難度でプレイヤーの心を折る“死にゲー”だが,その根元にはプレイヤーへのおもてなしの心がある。本講演の内容を踏まえた上で,「ELDEN RING」をもう一度プレイし直すのも面白いのではないだろうか。