Lowtek,ゲームにおける難読症への取り組みを語る –

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Alastair Low氏が,業界における難読症フレンドリーな選択肢と,難読症プレイヤーがゲームをより楽しめるようにするための独自の解決策について語る。

Lowtek,ゲームにおける難読症への取り組みを語る

 アクセシビリティに関する議論は,ここ数年,急速に進展している。AAAもインディーズも同様に,より幅広い能力に対してより強固な機能を徐々に受け入れているが,難読症は,かなり一般的であるにもかかわらず,ほとんど無視されたり,あまり知られていない問題の1つである。

 英国では,最新の公式発表によると(参考URL),人口の約10%が難読症で,630万人がこれにあたるとされている。欧州難読症協会では,世界人口の5%から12%が難読症の影響を受けていると推定している(参考URL)。

 Lowtekの創設者であるAlastair Low氏は,自身も難読症であり,難読症の影響についてゲーム業界を啓蒙するために精力的に活動している。数週間前,Low氏は,デベロッパが難読症に優しいテキスト読み上げオプションをゲームに追加できるUnityプラグイン,DislectekでScottish Games Awardを受賞した(関連英文記事)。彼の技術は,先週のTIGAアワードにもノミネートされている。

 「UnityのデフォルトテキストやTextMeshProを使用している場合,ゲーム内で音声合成を行うことができるユニバーサルなものです」と,Low氏はGamesIndustry.bizに語っている。「ゲームを一時停止して,任意の場所をクリックすると,テキストを読み上げることができる。ゲームを一時停止し,任意の場所をクリックすると,テキストを読み取ることができる。スクリーンリーダーを使い慣れた人なら,すでに知っている声を使うこともできるし,速度を変えたり,いろいろな設定を変更することも可能だ。

Lowtekの創設者であるAlastair Low氏
Lowtek,ゲームにおける難読症への取り組みを語る

 Bloons(※Tower Defense)の開発会社Ninja Kiwiで7年以上アーティストやアニメーターとして働いていたLow氏は,パンデミックの時期に会社を設立した

 「大学時代,何年も前からこれをやりたいと思っていたのですが,それから少し快適になりました。ちょっと飽きていましたし,COVIDのときでしたから,『もう辞めようかな,別にレストランとかにも行かないし,そうすればお金も貯まるし』と思いまして」と氏は笑う。

 当時,Low氏はDislectekに取り組み始めたばかりで,ファミコン向けのジャンプアクションFleaのKickstarterを成功させ,発売したところだった。
また,A Familiar Fairytale: Dyslexic Text Based Adventureもリリースしていた。これは,難読症であることのフラストレーションを人々に伝えるための実験的なプロジェクトだった。

 「これは『我々が見ているもの』というより,『どのように感じるか』を示すものでした」と氏は説明する。
「というのも,これを披露するためにイベントに参加したのですが,親がこれを読んでいる姿はとてもクールだったからです。本当にゆっくりと読み上げていて, そして,子供たちが目を輝かせて,『これが私の読み方なの!』と言っているのを見るのは,とてもクールでした。親御さんが理解できて涙ぐむこともありましたね」

 実際にプレイした人は,「ああ,やっと分かった」という感じでしたね。しかし,これはゲームとして売るのは難しいです。というのも,これはどちらかというと体験型のものでしたから……。ゲームなのですが,商業的なゲームではありませんので,お金にはならないのです。なぜなら,このゲームは文字どおり,あなたをイライラさせるためにあるようなもので,いい意味ではないのです」

 Low氏は,Kotakuの編集者John Walker氏が自身のブログBuried Treasureに寄せた記事を挙げ(参考URL),A Familiar Fairytaleの数章を終えたあとに感じたフラストレーションと,氏がいかに諦めようとしたかを説明している。

 「そこがポイントでした」とLow氏は語る。「もし,あなたが難読症だったら,同じように諦めるでしょう? 何人の人がゲームの最後を見たか分かりませんが……」

A Familiar Fairytale: Dyslexic Text Based Adventureは,難読症の人が読書をする感覚を再現することを意図していた
Lowtek,ゲームにおける難読症への取り組みを語る

 Low氏の難読症は,もちろん氏が作るゲームの種類に影響している。彼が「古いゲーム」と呼ぶもの(彼はファミコンでTapeworm Disco PuzzleとFleaをリリースし,現行機で発売される前にDreamcastに移植した)を作ることへの興味は,これらのゲームのほとんどがよりシンプルでテキストをあまり必要としないという事実からも来ていると氏は語る。

 氏はまた,Playdateの開発,およびそのゲームのいくつかの適合に携わっており,現在は,プレイヤーが巻き戻したり早送りしたりできるオンラインメディアプレイヤーを舞台としたパズルプラットフォーマー,Playheadに取り組んでいる。また,A Familiar Fairytaleよりももう少し洗練された教育用ゲームを作ることに抵抗はないという。

 「もっと商業的に成立するようにしたいのですが,そのために何が必要かが分かりません。私は,難読症フレンドリーなゲームをもっと作りたいと考えています。難読症の人たちは,読むことよりも,パズル的なものやゲームプレイを楽しむべきです」

 「そして,私が開発しているアクセシビリティツールが普及することを望んでいます。でも,それはなかなか難しいことだと思うのです。Dislectekを使っている人は何人かいるのですが,大きなゲームには使われていないんです」

Tapeworm Disco Puzzleは当初ファミコン向けに発売されたが,その後Playdateなど多くのプラットフォーム向けにアレンジされた
Lowtek,ゲームにおける難読症への取り組みを語る

 現在,難読症に優しいアクセシビリティの選択肢として広く知られているのは,難読症の人が読みやすくなるとされる特定のフォントを使用することのみだ。しかし,今年の初めに行われたDevelop:Brightonの講演で,Low氏は,難読症の人にとってそれが必ずしも的を得ているとは限らないことを指摘している。

 「それがきっかけで,『これは使えない』ということを示す必要が出てきたんです」と氏は語る。「A Familiar Fairytaleを開発したときも,我々が直面している問題を示すために,A Familiar Fairytaleのオプションの1つに,これらのフォントを追加しました。しかし,プレゼンでも言ったように,何の変化もなかったのです。また,いくつかの研究では,フォントの効果はほとんどないと言われています。人によっては悪化させることもあります」

 Low氏は,このフォントが「良いことをしようとしている誰か」によって誠実に作られたものであることを認め,それがオープンソースであることを高く評価している。

 「彼らは努力しており,言っていることは筋が通っています。しかし,実際には……」と,言葉を濁す。
 「どれだけテストされたか分かりませんし,確証バイアスがあったかもしれません。それは,アーレン症候群のような他の症候群のせいかもしれませんし,特定の感受性のせいかもしれません。 ― これらのフォントは本当に役に立たない視覚的なノイズです。一部の人々は,フォントを愛用していますが,一般的には,私が話をした人々は,フォントを好まないようです」

 ゲームをしている難読症の人が直面する問題は,あらゆるタイプのテキストを読むことに帰結するとLow氏は語るが,問題は多面的で,多くの人が通常想像しているよりも広範囲に及んでいる。

 「台詞が多いゲームは非常にたくさんありますが,それを読めないというだけで本当に困ったことになるのです」とLow氏は語る。「読めはするのですが,素早く読むことができませんので,とても楽しめませんし,言葉や状況を理解するのがとても難しいのです」

 「ですから,たとえ1文ずつの小さなテキストボックスがたくさん用意されたとしても,本当にすぐに疲れてしまうのです。2,3文以上の文章になると,もうあきらめるしかありません。ほかの多くの難読症のプレイヤーも,まさに同じような状態だと感じています。とくにストーリー性のあるゲームだと,読み飛ばしてしまうのです」

 「ダークソウルのようなゲームでは,アイテムの説明のようなものがあります。これらは本当に重要で,特殊効果を教えてくれるものもあるのですが,それを見ることができないのです。wikiとかで調べて,ネット上の人を信じるしかないですね。クエストの目的も本当に厄介です(笑)」

Lowtekは現在,オンラインメディアプレイヤーを舞台にしたタイトル,Playheadに取り組んでいる

 テキスト読み上げは,Lowtekが難読症のプレイヤーがゲームをより楽しめるようにするための主要なソリューションであることに変わりはない。そして,UIを含むゲーム全体をカバーする必要がある。

 「音声化されたゲームでも,メニューなどは音声化されていませんし,大きなテキストも音声化されません。それを読めるようにするだけで,高品質である必要はなく,ロボットの声としてレンダリングすることができれば,それが必要な人の助けになるのです」

 また,テキストを「難読症英語」(ここでは母国語を英語と仮定)で利用できるようにする可能性についても言及しており,難読症を念頭に置き,よりシンプルに,「余計なものを一切排除」して考えた言語であると説明している。

ゲーム作りは,これまで課されてきたソフトウェアの中でも最も複雑なものの1つです。それを単純化するのは本当に難しいことです

 「テキスト読み上げの実装は本当に難しく,それが問題なんです」と氏は続ける。とはいえ,The Last of Us Part 2 や Assassin’s Creed Valhalla など,最近のゲームにおける良い例にも触れている。

 「The Last of Us Part 2 は良い出来でした。Dislectekをリリースしたばかりでしたが,『ああ,私がやってることは正しいんだ』と思えた最初の作品でした。これは,(人々が)これを望んでいることを証明するものの1つです」

 難読症は,ゲームをプレイする能力だけでなく,ゲームに携わる能力にも影響を与える。Epic GamesやUnityのようなエンジンメーカーが,自社のツールをより使いやすくするための工夫をしているかどうか,Low氏に聞いてみた。

 「ゲーム制作は,これまで課されてきたソフトウェアの中でも最も複雑なものの1つなので,本当に不思議なことなのですが,これを単純化するのは本当に難しいのです」と氏は答えている。しかし,Unreal にはメニューの音声合成オプションがあり,ビジュアル コーディングに依存するエンジンもあることを付け加えている。

Fleaは2020年にキックスタートに成功し,ファミコンやDreamcastなどでリリースされた
Lowtek,ゲームにおける難読症への取り組みを語る

 「あるところでは,みんなを混乱させると思うのですが,ソフトウェアの異なる部分に同じような用語を使っているんです。『アニメーション』とか『アニメーター』とか,いろいろなバリエーションが出てくるのに,全部違うシステムなんです。私も困っていますが,難読症の人だけでなく,他の人も困っているはずです」

 Low氏は,ゲームにおいて難読症の人のための使いやすいドキュメントがもっとあればいいと語り,たとえばYouTubeはドキュメントやチュートリアルのビジュアルプレゼンテーションができる貴重なリソースであると付け加えている。

 「そうですね,もしエンジンを作っている人たちが,本当に要領のいいビデオチュートリアルのようなものを作ってくれたなら,本当にクールだと思いますし,特定の事柄についてだけでも,実際にドキュメントの中でリンクさせることもできますね。それはとてもいいことだと思います。ドキュメントの中でテキスト読み上げを使うこともできますが,それが大きな文章であれば,本当に圧倒されてしまうでしょう」

ゲームでのテキスト読み上げを容易にできるかは,プラットフォームホルダーにかかっています

 また,難読症フレンドリーなフォントが,あらゆるものの黄金解と見なされてきたこと,そしてそれがいかに真実からかけ離れているかについても言及している。アクセシビリティは常にスペクトラムであり,あるオプションが誰かを助け,他の誰かを妨げる可能性があるような,万能の解決策は決して存在しないとLow氏は語る。

 「フォントを入れ替えるだけでいいというのが,当時の業界のアドバイスだったのは確かです」と氏は語る。「ですから,私は変化を起こそうとしているのです。私のアイデアを他の誰かが選び,それを実行に移すなら,私は幸せです。それが実現すれば」

 「我々は今,会話のスタート地点にいると思っています。Unityかどこかのミドルウェアが,アクセシビリティに関するさまざまなことを支援するものを開発し,それが一般的になっていくのでしょう。そして,異なるゲーム間の同じインタフェースが,より標準化されていくでしょう。しかし,我々はまだそのスタート地点に立ったばかりで,あとは誰がそのパイを手に入れるのか,そしてそれがどの程度うまくいくのか,ということが重要になります。ゲームでのテキスト読み上げをより簡単にするためには,プラットフォームホルダーが重要になってくると思います」