ダウンロード2日目までが勝負! ハイパーカジュアルゲームアプリ特有のマーケティング戦略を解説 –

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 モバイルゲームはアプリエコシステムで最も大規模かつ成長の速いカテゴリーで,世界には25億人以上のモバイルゲーマーが存在します。また,ゲーム業界全体の収益の51%はモバイルゲームが占めており,その中でもハイパーカジュアルゲームの収益は,2021年に25億ドルに達すると予測されています。人気が高いこのゲームジャンルは近年世界中を席巻していますが,マーケティングは独特の手法を必要とする,ユニークでニッチなジャンルでもあります。

ハイパーカジュアルゲームの成長と,ほかのゲームアプリの異なる点

 Adjustの「モバイルアプリトレンド 2021:APAC版」によると,2020年,全APAC市場でハイパーカジュアルゲームは大きな成長を見せました。インストール数において,2020年に引き続き2021年も上昇傾向です。日本でも成長を見せており,2020年は46%,2021年も31%と高い伸びを続けています。セッション数においても成長が見られ,2020年,日本は前年比99%増となりました。ハイパーカジュアルゲーム以外のゲームアプリも日本で成長を見せており,インストール数は2020年はそれほどでもありませんが,2021年には41%,セッション数は2020年に42%増加しています。

ダウンロード2日目までが勝負! ハイパーカジュアルゲームアプリ特有のマーケティング戦略を解説
ダウンロード2日目までが勝負! ハイパーカジュアルゲームアプリ特有のマーケティング戦略を解説

 一般的に,ゲームアプリのセッションごとの平均滞在時間は,ほかのカテゴリのアプリと比べて長い傾向にあります。たとえば,目的を完了するのに数秒しかかからないバンキングアプリや決済アプリとは対照的に,ユーザーはエンターテイメントアプリをより長い時間利用しています。2020年,ハイパーカジュアルを除くゲームは前年比27%でしたが,ハイパーカジュアルのセッション数は36%でした。セッションごとの平均アプリ滞在時間は,カジュアルゲームは21.19分,スポーツゲームは22.77分を記録し,大幅に伸びたにもかかわらず,ハイパーカジュアルゲームは18.78分あたりに留まりました。30日間で比較したアプリ内滞在時間でもハイパーカジュアルゲームはほかのゲームアプリと異なります。ゲームカテゴリの中央値は,比較したそのほかのアプリカテゴリよりはるかに高く,2020年第4四半期を見ると,0日目が24分,1日目が53分,3日目が48分,7日目が47分,30日目が45分となっています。しかし,ハイパーカジュアルのアプリ内の滞在時間は,まったく異なる傾向を示しました。Adjustの第4四半期データでは0日目が8分で,翌日は15分と急激に増えていることが分かります。ところが,7日目までにアプリ内滞在時間は9分,30日目は7分までに低下しています。

ハイパーカジュアルゲームについてデータから分かること

 ハイパーカジュアルゲームの特徴は,継続率の低さにあります。2020年第4四半期のデータを分析すると,ゲームアプリの継続率は30%と1日目が最も高く,ハイパーカジュアルゲームが27%でした。しかし,7日目までに再びアプリを使用するハイパーカジュアルゲームユーザーはわずか7.5%で(全カテゴリーの中央値は15.2%),30日目にはわずか1.75%しかアプリを再度利用しておりません。

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 ハイパーカジュアルの継続率が低いのは,ゲームメカニクスがシンプルで,ユーザーに次々と他のゲームをプレイしてもらう「雪だるま方式」の性質に由来します。ハイパーカジュアルゲームのマーケターが注力するのは継続率の改善ではなく,ユーザーをゲームに誘導して即時に収益化し,またほかのゲームをプレイしてもらうことです。

 これはハイパーカジュアルゲームがほかのカテゴリより(またほかのゲームカテゴリと比較しても)多くのパートナー(ユーザー獲得のためのアドネットワーク)と連携している事実からも納得できます。全カテゴリにおいてアプリが使用するパートナー数の中央値は5で,2020年第4四半期には6に増加しています。ゲームのパートナー数は全体で7とほかのカテゴリを上回っており,ハイパーカジュアルゲームはさらに多く,9でした(もし連携するパートナー数がこれより少ない場合は,追加の検討をおすすめします)。

 ハイパーカジュアルゲームの継続率はダウンロードから2日目以降急激に低下するため,この2日間にできる限り多くの収益を確保する必要があります。ハイパーカジュアルの第4四半期のペイドインストールとオーガニックインストールの割合は3.17と最も高くなっているため,この目標はとくに重要です。率直に言って,これは悪いことではありません。なぜなら,ハイパーカジュアルゲームのインストール単価は非常に低いため,より多くのユーザーを可能な限りスピーディーにアプリに誘導することが可能だからです。また,ハイパーカジュアルゲームの多くは最初の2日間で,ポートフォリオ内の別のゲームにユーザーを誘導するためのクロス・プロモーションを行います。ゲームユーザーはターゲティング広告を好む傾向にあるため,iOS 14.5以降のApp TrackingTransparencyのオプトイン率も高い傾向があります。

 一方で,ゲームカテゴリ全体における同四半期のペイド-オーガニックの割合は,わずか0.69でした。これは,ユーザー獲得に費用をかけた場合,ユーザーの収益化が新たな重要性を持つことを明確に示しています。ハイパーカジュアルゲームは費用の点だけでなく,効果的な収益化戦略のうえでもほかのカテゴリとは異なるアプローチが必要です。それでは,マーケターは何を知っておく必要があるのでしょうか?

ハイパーカジュアルゲームの収益化を目指すためには

 通常ハイパーカジュアルゲームは無料でプレイできるため,広告で収益化を図っています。広告で成功を収めるための最短ルートは,広告をパーソナライズすることです。パーソナライゼーションというと,多くの人は,広告が紹介する製品とユーザーの関連性を高めたり,ユーザーの名前を表示したりすることを連想しますが,ハイパーカジュアルゲームにおいては少し違った観点から検討する必要があります。これはiOS 14.5以降プライバシーがより重視されるようになった今,とくに重要です。

 まずは,広告を表示する頻度について実験し,最適な表示回数を見つけましょう。ハイパーカジュアルゲームのユーザーは,画面に広告が頻繁に表示されることに慣れている傾向があります。例えば,1分間にゲームプレイよりも多くの数の広告を表示したとしても,オーディエンスの注意を引き付けて収益を上げることができます。ただしそれには限界があります。Adjustの調査によると,表示頻度のスイートスポットは1分あたり2〜3回ですが,1分間に4回以上広告を表示したハイパーカジュアルゲームが,1か月あたり約3万5000ドルの収益を上げたことが分かっています。広告の表示頻度を最適化することで,ハイパーカジュアルゲームは収益を最大10%増やすことができるのです(これは皮肉なことに,IDFAの取得が困難な時代にハイパーカジュアルがより優勢な位置付けにあることを示唆しています。ポストIDFAの世界では,ターゲティング広告による収益の損失を補うために,アプリはさらに多くの広告を表示する必要があります)。

 また,マーケターは動画広告やインタースティシャル広告,ネイティブ広告など,ユーザーの好みに合わせて広告フォーマットを選択する必要があります。たとえば,ユーザーがインタースティシャル広告よりも動画広告に反応していることが分かれば,パフォーマンスの低い広告に貴重な時間を費やす必要がありません。最近注目が集まっているリワード広告を採用している場合は,さまざまなリワードを試してみて,ユーザーのエンゲージメントが高いものはどれかを確認しましょう。

 無料でプレイできるゲームを収益化するには,良いバランスを常に保つ必要があります。プレイヤーの出入りが激しいハイパーカジュアルゲームでは,この点がさらに重要です。しかし,ハイパーカジュアルゲームのパブリッシャは,ゲームの特徴を利用して同じポートフォリオ上のゲームへクロスプロモーションをしています。つまり,一度ゲームをプレイしたユーザーは,さらなるチャレンジを求めて別のゲームへと進むようになるのです。これにより,ゲームのシリーズ全体にわたってユーザーに広告を表示でき,より効果的なハイパーカジュアルゲームの収益化が可能になるわけです。

佐々 直紀
 1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり,オンラインモールのキュリオシティ,Yahoo!ショッピング,ショッピングサーチビカム,リターゲティング・DMPのVizuryにてAE,AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入、2016年11月よりAdjustに参画。数々のスタートアップの立ち上げから軌道に乗せた経験を生かし、ゼネラルマネージャーとしてAdjustの日本オフィスを統括している。