Jim Ryan氏:何億人もの人々が我々のゲームを楽しんでくれる世界を望んでいます –

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PlayStationの社長兼CEOが,よりユビキタスで無限のゲーム産業への希望を語る。

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントの社長兼CEOであるJim Ryan氏は,PlayStationのゲームを数千万人ではなく,数億人のプレイヤーに届けられるようにしたいと語った。

 GI Live.Londonで行われた基調講演の中で,PlayStationのボスは,PS4やPS5でヒットしたゲームの売上は1000万から2000万程度だが,ゲームが映画や音楽のようにどこにでもある(ユビキタスな)ものになれば,それも変わってくるだろうと述べた。

 未来への希望を聞かれたRyan氏は「私は,PlayStation 5が,ソニーにとって最大かつ最高の,そして最も愛されるPlayStationになると信じています。そうなればいいなと思っています」と答えた。

 「私は,PlayStationで作っているゲームが,何千万人もの人々に楽しんでもらえるような世界を見てみたいとも思っています。もしかしたら,何億人もの方々に楽しんでいただけるかもしれません。現在の家庭用ゲーム機モデルでは,PlayStationで大ヒットしても,1000万人から2000万人の方々にしかプレイしてもらっていません」

 「ゲームと音楽,ゲームと映画を比較した場合の話をしましょう。音楽や映画は,ほとんど無限の人が楽しむことができます。我々のスタジオが作っている芸術作品のいくつかは,世界中で作られている最高のエンターテインメントだと思っています。それなのに,素晴らしいエンターテインメントの観客を,2000万人や3000万人で門戸を閉ざしてしまうことが,私には不満です。私は,何億人もの人々がこれらのゲームを楽しむことができる世界を見てみたいのです」

 また,Ryan氏は,Play At Homeの取り組みにより,6000万本のゲームがプレイヤーに還元されたことを明かした。さらにPlayStationの創始者である久夛良木健氏との苦しいミーティングのエピソードや,ロンドンのダイニングテーブルでPS5を発売したことなどを紹介した。

 インタビューの詳細は以下のとおりだ。

―今年は,ゲームソフトの遅延やゲーム機の製造上の問題など,難しい1年でした。しかし,The Last of Us Part 2,Ghost of Tsushima,Spider-Man: Miles Morales,Returnal,Ratchet & Clankへの評価やあなたが買収したスタジオや会社の数。そして,PS5の勢い……。これらを見ると,あなたはかなり満足しているのではないですか。

 ええ,この18か月はとても充実していました。みんなと同じように,2020年3月にオフィスを閉鎖しました。そして私は戻ってきました。私のライフスタイルはかなり変わっています。人生のほとんどの時間を暗闇の中で仕事をしているような気がしますね。朝早く起きて,日本とのやりとりをして,それから休憩して,またアメリカとのやりとりを始めるんです。ですから,日の光を浴びることはほとんどありません。それは奇妙なことでした。

 しかし,その間にチームが成し遂げたことをとても誇りに思い,満足しています。あなたはそれをリストアップしてくれたように,2020年にはGhost of TsushimaとLast of Us: Part 2という素晴らしいゲームを発表し,もちろん発売もしました。北ロンドンのハイゲートにあるダイニングルームのテーブルで,このようなことができたのは非常に素晴らしいことでした。かなり変わった経験で,二度と繰り返したくないものでしたが,とても楽しかったですね。

―実際に体験することができないPS5のプロモーションは大変だったと思います。しかし,それでもファンは集まってくれましたね。

 パンデミックの中でマシンを作ることの難しさに触れましたが,これは非常に難しいことです。もちろん,非常に難問です。しかし,これまでにない速さで1000万台の販売を達成できたことは,とても嬉しく,誇りに思っています。世の中にはたくさんの需要がありますが,実際に機械を作り,中国から運んできて,店に並べて売り切るというのは,英雄的な努力が必要です。

―あなたが行っている活動の1つにPlay At Homeがありますが,これは隔離された人々に無料でゲームを提供するというものです。これはまだ続いているようだね。どのような状況ですか?

 2回行いました。最初のロックダウンで皆が苦労しているときに,これはいいことだと思ったのです。実際にやってみて,その反応にとても満足しました。その後,クリスマスを過ぎて再びロックダウンが始まりましたが,みんな……ちょっと惨めな気持ちになっていました。そこで,もう一度やってみようと思ったのです。今回は数か月にわたって実施しましたが,この活動の一環として6000万個のゲームが交換されました。

―もうやらないのですか?

 COVIDが終わったかどうかによりますね。これもその1つです。世界がどのように進化するかを見守りたいと思います。もし,ロックダウンが2022年以降も続くようなことがあれば,誰にも分かりません。もう一度やらなければならないと思うかもしれません。待ちましょう。

―さて,今回のセッションでは,あなたのキャリアについて知る部分もありました。というのも,あなたのキャリアについてはあまり知られていないからです。あなたは最初からPlayStationにいたわけですが,当時は何をしていたのですか?

 私が入社したのは1994年,初代PlayStationが発売される前年でした。私の仕事は,ヨーロッパ大陸にPlayStation関連企業を設立することでした。ロンドンのビルには20人ほどの社員がいて,英国内での活動に専念していましたが,ヨーロッパではまったく何もなかったのです。そこで私の仕事は,外に出てオフィスを探し,人を雇い,システムやプロセスを整え,セールスフォースを確保し,流通を組織することでした……。ドイツから始まって,フランス,イタリア,スペイン,スイス,オーストリア,スカンジナビア……本当に大変で,チャレンジングな,しかし最終的には充実した2年間でしたね。

―どこかで読んだのですが,文字どおり家具を手に入れるところからやっていたのでしょうか?

 フランクフルトでオフィスを借りたのですが,そこには机も椅子もないことに気づきました。当時は何も売っていなかったので,お金があまりありませんでした。現金がないんです。結局,IKEAに行って机を買い,その後,誰かに組み立ててもらうためのお金が残っているか,自分たちで組み立てなければならないかを検討しました。幸いなことに,私には便利屋としてのスキルがあったので,誰かに組み立ててもらうための資金は保留でき,その机は何年も活躍してくれました。私の自慢の机です。IKEAは誰にでもお勧めできますよ。

―初めてPlayStationのゲームをしたときのことを覚えていますか?

 そうですね,最初のゲームはジャンピングフラッシュでした。日本のスタジオで作られたプラットフォーマーで,3Dのプラットフォーマーに驚き,喜びを感じました。ジャンピング・フラッシュを覚えている人がいたら,感心しますね。ローンチタイトルの1つでしたから,それが私の最初のゲームです。

―では,そのヨーロッパのオフィスを立ち上げたあと,次に何をしたのですか? 

 立ち上げが終わったあと,2年ほどはかなり忙しい日々を送っていました。その後,私はヨーロッパの組織の財務機能を担当しました。当時のビジネスは本当に地域に密着していました。完全に自己完結したヨーロッパのビジネス,完全に自己完結したアメリカのビジネス,完全に自己完結した日本のビジネスがあったのです。私はヨーロッパの財務を担当しました。その後,PS1のサイクルを経て,PS2にたどり着きました。それは……異なる経験でしたね。

―そうですね,PS1は大成功でした。しかし,史上最も成功したゲーム機となったのはPS2でした。

 結果的には最も成功したのですが,実は皆さん忘れているようですが,ヨーロッパでは最初はとても厳しかったのです。1999年から2000年にかけての話です。ヨーロッパの経済は混乱していて,ユーロもありませんでしたから,299ポンド,800ドイツマルク,2100フランスフラン,2000ペセタ,40000リラなど,本当に混乱していて,凄く大変でした。アメリカや日本は好調だったのですが,ヨーロッパでは何も売れませんでした。

 私も参加していたリーダーシップでは,東京に呼ばれて,PlayStationの生みの親である久夛良木健氏と対談しました。健さんは,個人的にも業界的にも,とても堂々とした人でした。そして,我々を座らせて,こう言ったのです。「非効率的なビジネスを変えてほしい」と。我々は,「ああ,健さん,それはいいアドバイスだ。それで,我々は先んじて,そうしていこう」と決意したのです。あとはご存じのように,その結果,ヨーロッパがPS2をリードする地域になりました。

 私が誇りに思っていることの1つは,限界を超えたことです。それまでゲーム文化のなかった市場を開拓したのです。中東……中東ではPlayStation以前に人々はゲームをしたことがありませんでした。ロシアはPlayStationが登場する前はゲーム産業がほとんどありませんでした。スペインもPlayStation以前はゲーム産業が非常に小さかったのです。このように,我々は地理的な限界に挑戦しました。

 そして,我々がたどり着いたことの1つは,ユーザー層を広げることでした。そして,SingStarやBuzzなどのソーシャルゲームが登場し,ユーザー層が我々の知らない場所へとシフトしました。これまでゲームが到達しえなかったところまです。

―あなたがPlayStationで過ごした時間の中で,重要な出来事は何だったと思いますか?

 あの久夛良木さんと会った瞬間は,かなり重要な意味を持っていましたね。実際にかなりの性格付けができました。

 PS4の発売時にも注目したいですね。PS3では,さまざまな課題に直面して苦労しました。皆,疲れ果てていたと思います。そして,2013年のE3で大きな出来事がありましたが,それも大きな瞬間でした。我々は,「おお,我々はこれもできるんだ」と思い,もしかしたらPlayStationが復活するかもしれないと感じたのです。

 それが1つで,もう1つは昨年のPS5の発売です。さまざまな理由から,奇妙で,ほとんどシュールな出来事が続いていました。今回の発表会は,ロンドン北部のダイニングルームのテーブルで行いました。私の同僚のほとんどは,何千マイルも離れたアメリカ西海岸にいて,8時間も離れています。また,日本にいる他の同僚は,同じように何千マイルも離れていますが,方向も時間帯も逆です。そこから非常に多くのことを学びました。

―ヨーロッパの責任者になってからは,裏方から表舞台に立つようになりましたね。その変化をどう感じたましたか?

 私はもともと,とてもシャイな人間です。内向的な性格なので,人前で話すことが自然なことではありませんでした。しかし,しばらくすると,あなたのような人たちと関係を築くことができるようになりました。我々は何度も顔を合わせていますが,それが楽しくて,今ではそれが仕事の一部になっています。

―最初のGamescomでのスピーチの直前にお会いしたのを覚えています。少し緊張しているようでしたね。

 Andrew Houseはヨーロッパを統括していましたが,昇進して東京を拠点とするPlayStationを統括することになりました。私はGamescomの2週間前に知らされていたので,少し緊張していたんです。

 PS5の発表会で不思議だったのは,あの規模のイベントがすべてデジタルで行われたことです。たしか発売の2〜3週間前にこの部屋でやって,その後,実際に家で家族と一緒にテレビで発売イベントを見たわけです。去年の数あるシュールなイベントの中で,あれが一番シュールだったかもしれません。

―先々週には,事前に録画されたアワードイベントを行いました。大事な瞬間をじっくりと味わえるのはいいものですね。

 ええ,でも,スクリーンに映った自分の子供が笑っていたりすると,ちょっと気が重くなりますね。

―あなたにとってPlayStationとは何ですか? なにがPlayStationを定義し,他とは違うものにしていると思いますか?

 私はいつも3つのことを考えています。もちろん,最も重要なのはゲームです。しかし,2つめは,これは年々大きくなっている現象だと思うが,PlayStationを楽しんでいる人たちが参加できるコミュニティの感覚です。そして3つめは,我々のブランドです。PlayStationは常にクールです。PlayStation 5が誕生してからの数か月間,私が最も楽しんでいることの1つは,人々が関わりたいと思うものの最先端にいるということでした。これは素晴らしいことだと思っています。

―では,PS5をクールにしているのは何だと思いますか?

 まず第一に,ゲームですね。そこに立ち返らなければいけません。当時,私はこのように述べましたが,今でもその言葉を支持しています。ローンチ時のゲームのラインアップは,これまでで最高のものでしたし,おそらくどの家庭用ゲーム機プラットフォームのローンチ時と比べても最高のものだったと思います。その後,ReturnalやRatchet & Clank,そして米国で発売されたMLB: The Showは素晴らしいゲームでした。また,これから発売されるゲームのパイプラインも素晴らしいものばかりです。どのゲーム機よりも圧倒的に強力で,これらのゲームが次々と発売されるのが待ち遠しいですね。Horizon,God of War,GT7……。それが最終的に我々を定義するものだと思います。

―最近のお気に入りのゲームは何ですか?

 Ratchet & Clankですね。このゲームは大好きです。このゲームは,PlayStation 5で何ができるかを定義してくれる,最初の素晴らしい実例だと思います。これから数か月,数年のうちにもっとたくさんのゲームが登場するでしょう。でも,これを見て,「他のゲーム機ではこんなことはできない」と思うでしょう。美しいゲームであり, Insomniacが我々のファミリーの一員となったことはとても素晴らしいことです。彼らは,これまでもずっと忙しく仕事をしていました。

―未来を予測することは,愚かなことかもしれませんが,クラウド,ストリーミング,VR,サブスクリプション,メタバーズなど,さまざまな話題があります。最もエキサイティングなものは何だと思いますか?

 振り返ってみると,私が最もワクワクするのは,ゲームがよりユビキタスになっていることです。そしてそのユビキタス性は,毎年,そして家庭用ゲーム機の世代ごとに高まっています。ゲームは高齢者層にも受け入れられ,若年層にもアピールし,年を追うごとに男女同権が高まり,エンゲージメントの深さも増し,地理的にはゲーム文化のない市場でもゲームにアクセスできるようになってきています。この現象は,ゲームを作る人にとって,膨大な数のオーディエンスの拡大という意味で,とてもエキサイティングなことだと思います。話を戻すと,かなりの時間がかかるかもしれませんが,ゲームが音楽や映画,テレビ番組のようにユビキタスにならない理由はないと思います(※記事原文は I see no reason why gaming as ubiquitous as music, movies or TV showsだが,ムービー中ではwhy gaming shouldn’t be 〜 と言っている)。ゲームを作る人やゲームを遊ぶ人にとっての意味を考えると,それは本当に素晴らしく,強力な可能性を秘めています。

―それを加速させるにはどうしたらいいと思いますか? それとも,時間が経てば自然にそうなるのでしょうか?

 自然にそうなるでしょう。あなたのように,1990年代に初代PlayStationを始めた人もいるでしょう。1995年に18歳だった人が,今では40代半ばから後半になっていて,そのうちの多くがまだ我々と一緒にいるはずです。そして,それは今後も続くでしょう。その人たちは,これからもゲームを続けていきます。さまざまな種類のゲームを,さまざまなプレイパターンで。時間の経過は,そのユビキタス性を有機的に支援することになるでしょう。

 我々がやっていることで気に入っていることの1つは,非常に若い視聴者にかなりよく響いているということです。これが,私がPlayStation 5に大きな期待を寄せている理由の1つです。しかし,これはPlayStationの現象ではなく,エンターテインメントの現象です。

 また,テクノロジーも助けになると思います。これは我々がとくに得意としている分野ですね。テクノロジーの世代が上がるごとに,処理能力やグラフィックス能力が向上していきますが,抽象的にはまったく意味がありません。しかし,ストーリーテリングの技術を高め,キャラクターや感情,個性を表現する能力を高めることができれば,とくにハイエンドのゲーム体験はますますリアルになり,より豊かで感情移入しやすいものになるでしょう。そうなれば,他のエンターテインメント,とくに映画との融合が進むことになります。そして,それがこのユビキタス化のプロセスを加速させると思います。

―パンデミックがユビキタス化を加速させたようですね。

 確かにそうですね。家庭でのプレイについてお話ししましたが,これはコミュニティのエンゲージメントを確保する上で非常に有効でした。しかし,どのゲーム会社も大体において,自分たちが作っているゲームにかなりの関心を寄せています。そのような関心は今後も続くでしょうし,我々はそれを歓迎し,できる限り多くのゲームを提供できるように努力したいと思います。

―最後に,すべてのゲームファンに向けて,PlayStationの未来に何を期待していますか?

 PlayStation 5は,ソニーにとってこれまでで最大かつ最高の,そして最も愛されるPlayStationになると信じています。それが実現することを願っています。

 また,我々がPlayStationで作っているゲームが,何千万人もの人々に楽しんでもらえるような世界になってほしいと思います。もしかしたら,何億人もの人に楽しんでいただけるかもしれません。現在の家庭用ゲーム機モデルでは,PlayStationで大ヒットしたゲームは,1000万人,2000万人の人々にしかプレイしてもらえません。

 我々は,ゲームと音楽,ゲームと映画を比較しています。音楽や映画は,ほとんど無制限の人が楽しむことができます。我々のスタジオが作っている芸術作品のいくつかは,世界中で作られている最高のエンターテインメントだと思っています。それなのに,我々のスタジオが作っている素晴らしい芸術,素晴らしいエンターテインメントの観客を,2000万人や3000万人で区切ってしまうことには,不満を感じています。私は,何億人もの人々がそれらのゲームを楽しむことができる世界を見たいと思っています。

※本記事はGamesIndustry.bizとのライセンス契約のもとで翻訳されています(元記事はこちら