コロナ禍で「お家時間」が増えたゲーム市場から見えたユーザの変化―ゲームは新たなコミュニケーションプラットフォームに?【CEDEC2021】 |

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国内最大のゲームカンファレンス「CEDEC2021」が8月24日から26日にかけて開催され、「コロナ禍で増加したゲーム市場を支える生活者動向研究」のセッションが公開されました。

本セッションは、2020年のゲーム市場が2000億円を超す伸びを見せたことを分析した結果を発表するものです。コロナ禍の影響下で、どのような人がどんなゲームをプレイし、何に対して支払いをしているのかなどなどを分析することで、ゲーム市場のターゲット像をアップデートし、今後のビジネスのヒントになることを目指したもの。博報堂の加藤直弥氏と、後皓介氏がスピーカーとなり、市場の分析が語られました。

コロナ禍のコンテンツ市場の状況とは

まず初めに昨年のコロナ禍から成長した市場について紹介。アニメ・特撮市場が大きく伸ばしたほか、マンガ・ライトノベル市場も伸長。それらを上回る形でゲーム市場が伸びたとのことです。「体感としても、普段ゲームしていない人も遊んでいる人が増えた」とのことです。

ゲーム市場にて利用人数のトップには「どうぶつの森」シリーズが上がったことが印象的とのこと。この結果からは、「2020年はコロナ禍によってゲームの遊び方が変わった年になったのではないか」と分析されました。

リアルには友人に会えなかったり、学生であれば卒業式に出られなかったりする状況でしたが、『あつまれ どうぶつの森』で一緒にプレイするかたちで代替していたりする例を挙げ、「新しい生活スタイルが起きた」と評していました。

他にも『フォートナイト』がトラヴィス・スコットのライブを行った事例や、『荒野行動』が乃木坂46のライブを実地したをあげ、ライブイベントを見るためにゲームを遊ぶという新しいゲームの使い方が増えている、とも分析しています。 

続いて各市場の販売メディアでなにが伸びているかを解説。とりわけとスマートフォンのアプリ市場が伸びており、特に2019年~2020年にかけて成長が著しいとのことでした。

先述のデータをさらに分析すると、パッケージに支出している人というのは、なんとシニアや親世代のような層が増加したとのことです。男性60代の層が大きく伸びたほか、ライフステージにおいては既婚者で子供のいる男性の層も増加したデータが出ました。

若い世代の伸び率が、すでにゲームに親しんでいる層が多いためにあまり大きくないのと比較して、シニアや親世代の増加は「これまでにゲームをあまり触れてこなかった層が支出している」と見られる模様です。

アプリ市場では50代の男性や既婚子育て期の男性層のほか、学生の女性層が増加したデータが出ています。ただし、先述した各メディア市場の増加データに見られたアプリ市場の伸長から考えると、大きく人が増えたわけではないようで、「人は増えているけど、平均支出の単価が上がった結果ではないか」と考えられるとのことです。

これらのデータからふたつの仮説が考えられました。「パッケージ市場に男性シニア層や若い女性層など、これまで少なかった顧客の層が増加したのではないか?」と分析できるほか、「アプリ市場では顧客が支出する金額が増加しているのでは。ゲーム1つに課金する平均額(ARRUP)が増えた結果が現れたのではないか」と考察できるそうです。

ではこうした仮説からはを元に、シニア向けを意識したゲーム開発や、平均課金額が上がる施策を行えばいいのか? といいのかというと、そうではありません。

今回のデータで取得したのはあくまで生活者の側面の一部でしかなく、実際には50代男性にもスポーツが好きだったりアニメが好きだったり、収入にも違いがあったりさまざまなスタイルの人々が存在します。それゆえに、市場を伸ばした生活者が一体どんな人々なのか? という理解を深めるために、遊んでいるゲームタイトルごとの階層クラスタ分析を実地したとのことです。

コロナ禍のゲーム市場を支えた生活者の分析

続いて、収集したデータを元にした階層型クラスター分析という手法を紹介。これは「似たような性質を持っている人たちが樹形図のように表現される手法」とのことで、今回はスマートフォンアプリやコンソールゲームをプレイしている人に実地したとのことです。

階層型クラスター分析を行った結果

この分析では、まず生活者の選択肢となるゲームタイトルに『あつまれ どうぶつの森』や『リングフィットアドベンチャー』、『モンスターストライク』や『荒野行動』といった人気タイトルを取り上げます。続いて、これらをカジュアルゲーム層やファミリーゲーム層といった12のクラスタに振り分け、各クラスタを分析していったそうです。

各クラスタを分析する一例として、スマホアプリのプレイ層ではシンプルに「スキマ時間にプレイできるゲームを遊ぶ層」で、初音ミクや「アイドルマスター」シリーズといった、グッズなども楽しむキャラ推しプレイヤー層は「魅力的なキャラを中心にストーリーが進むゲーム」を好んでいると説明。

そうした各クラスタごとの規模を分析すると、やはり友人と定番ゲームをプレイする層が圧倒的であり、続いて子供との一緒に遊ぶ層、スキマ時間にスマホゲームプレイする層が多いという結果が出ました。

個々のクラスタ解析では、ペルソナデータという使用するSNS分析まで含めた細やかながデータ解析が行われています。

たとえば人口推計が約1287万人という最大の規模を誇る、『あつまれ どうぶつの森』など友人と定番ゲームをプレイするクラスタの分析では、10~30代男性が多く、学生や未婚男性が多い結果が出ました。こちらはコンテンツへの支出も全体的に多く、ゲームへの興味を持つのにYoutuberのゲーム実況を観ていることなどが挙げられました。

このクラスタ分析ではさらに「Uberを使っているのか」みたいな細かい生活にまつわるレベルまで調査しているそうで、より具体的に生活者を想定できるようにしているとのことです。

アプリ市場とパッケージ市場を支えたクラスタとして、平均支出を上回っているクラスタには、引き続き友人と一緒にゲームプレイする層が上がっていますが、特筆すべきはグッズなども楽しむキャラ推しプレイヤー層だと言います。

『ディズニー ツイステッドワンダーランド』や『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』などのキャラクターが生きたゲームをプレイする、こちらの層では10~20代の男女で、学生が中心になることが多いそう。平均世帯年収こそ全体からは下がるものの、コンテンツに支出している金額は多いことがわかるそう。声優への興味が大きく、Pixivなどを見ておりキャラクターが好きなのが見えるとのことです。

つまり親元で暮らしながらアプリに課金している学生たちが多いということが見えてくる結果であり、「思ったよりドカドカ課金している」というのがわかってくるのだといいます。

続いて、『マインクラフト』や『フォートナイト』など友人とコミュニケーションプレイする層についての分析結果を紹介。10代から30代の男性が中心で、学生や未婚の男性が多く、コンテンツ支出金額が多いとのこと。こちらもYoutuberによるゲーム実況などをよく見ており、Twitterの利用比率も高いことが分かります。

さて、こうしたコロナ禍でのゲーム市場の成長を支えた、こうしたクラスタの生活者と今後どのように付き合うかを考えた時どうするのでしょうか? たとえばキャラ推しの層がどういう性格で動いているかを考えた時、どういう風に宣伝したりといったコミュニケーションが可能かについてが考察されました。

まず、各クラスタが利用しているメディアのデータを紹介。1位にテレビがあり、2位にスマートフォン、3位に自宅PCと続くかたちですが、これをキャラ推し層中心で観るとスマートフォンがもっとも利用されているとわかりました。これは若年層が多いゆえにスマートフォンが多いのだと分析されています。

続いて、各クラスタの利用するSNSの統計を紹介。週に1回以上使う、主なSNSにはLINEが主になっていますが、Twitterの資料率の高さが印象深いとのこと。また新興SNSとしてTik Tokが伸びているそうです。

もっとも利用されているインターネットサービスでは断トツでYoutubeが多く、継いでYahoo!ニュースが大きいとのこと。こうしたサービスから広告に接触することがわかる一方で、ニコニコ動画やPixivは統計全体よりクラスタごとの差分が大きいため、狙い撃ったプロモーションを考えるときには有効ではないかと言います。

ゲームの情報はどこから仕入れてくるのかというデータでは、全体ではテレビCMが主ながら、クラスタによってはYoutube、Twitterから情報を仕入れていることが大きいとのこと。こちらもクラスタによって情報を取りに行く媒体の違いが見受けられます。

以上のデータから、「各クラスタとのコミュニケーションを、たとえばYoutubeやTwitterで行うことは適切ながら、ではどのようなメッセージが必要なのか? ゲームに何を求めているのか?」を考えることが重要とのことです。 

ゲームと生活者の新しい関係の兆し

こうしたクラスタ分析から全体的にふたつの結果が見えてきたといいます。ひとつは、いまの生活者がゲームをコミュニケーションのプラットフォームとして捉えていること、ふたつめには、課金や生活者の支出が多層化してきている状況です

こうした状況に対し、各クラスタのコンテンツ消費意識のデータ収集も取りました。これは、「広告入りの無料ゲームで十分」とか「しっかり有料のコンテンツに支払いたい」という、コンテンツに対する向き合い方の意識についてを集計したものです。

たとえば友人と定番ゲームプレイ層では、「1年以内に過去利用したコンテンツを繰り返し利用する」などが語られており、他のクラスタにも似た傾向が見られたとのこと。つまり「ほぼすべてのクラスタにて、同じコンテンツを繰り返し利用している」状況が浮かび上がったそうです。

さらに「友人や知人とゲームで盛り上げるのが好きだ」という結果も出ていたことから、コミュニケーション要素が重要であることが見えてくるのだといいます。

このことから見えてくるのは、かつてのゲームは1本クリアしたら次のゲームを遊びにいくことが主でしたが、いまは同じゲームを遊んでいても、友人と遊ぶことでいつでも新鮮にプレイできるために「ゲームを遊び終える」ということが少なくなっているのではないか、ということでした。

実際に各クラスタがプレイしているタイトルも、『あつまれ どうぶつ森』や『ポケモンGO』など、他のプレイヤーとコミュニケーションすることがゲームデザインにも織り込まれているようなタイトルが人気を博しています。

では同じゲームを遊ぶ傾向があって、コミュニケーションメインならば収益のポイントはどうなるか? という疑問に関しても調査を入れています。こちらはほぼ全クラスタにて有料のオンラインサービスに加入して友人とプレイするというのが上がっており、このことから「コミュニケーションへの支払い傾向は高く、定着の兆し」があるのだと見えてくるとのことでした。

こうした背景にはスマートフォン普及や、SNS浸透以降のコミュニケーションの変化があると説明。今から数十年前は。固定電話によるコミュニケーションまで、それも特別な用事の時にだけ使うようなものでした。その後、電子メールが生まれ、それからスマートフォンにてメッセージアプリが出来、いまではビデオ通話も当たり前になるくらい、コミュニケーションは特別なことではなく、日常の延長にあるのです。

そのため、ゲームのコミュニケーションも同じように日常における会話の延長みたいなかたちが一般的となっているのではないか、とのことです。有料オンラインサービスへの利用においてもほぼすべてのクラスタにて、Youtubeライブ配信でのスーパーチャットのような投げ銭や、舞台裏の配信といったサービスへの支払いが特徴という結果が出ています。

このことから、生活者の課金対象が単にひとつのゲームだけではないという事実が明らかになっています。これは「音楽業界で起きた課金対象の多層化に似ている」とも解説されました。

かつては音楽業界もライブイベントやCD・DVD販売、グッズ販売といったフィジカルが中心だったことでした。しかし現在はデジタルに移行したことでオンラインライブの他にライブストリーム、さらにはクラウドファンディングなどなどの多様な手法で収益を獲得できるになった経緯があります。

ゲーム市場でも音楽業界の変化にも近い収益の多層化が起きたのではないかと指摘。ゲームビジネスは簡単に言ってパッケージの売り切りビジネスからDLCの追加課金というビジネスの変化を経ており、今後はYoutubeのゲーム講座みたいなものから有名プレイヤーへの投げ銭などなど、課金形態の多層化がより進むのではないかと見られています。

セッションの最後には、今後の未来について言及。

現在の博報堂では「生活者インターフェース」という概念を挙げているそうです。これは、生活者の体験としてさまざまな接点がたとえばIOTなどのデジタル技術が挟まることで、それは生活者とのコミュニケーションが可能なインターフェースになるのではないか、とのことです。そうしたインターフェースからまたデータを取得できるようにしていくことも、マーケッティングで重要な見方だといいます。  

その観点からはゲームでは、コミュニケーションプラットフォームが一般化していることもあり、生活者プラットフォームとして成立しているものだと説明。今後はゲームのプラットフォームの上で、『フォートナイト』で行われたようなライブや買い物だけではなく、教育なども参入する可能性について語られました。

仮に教育産業から自動車産業がゲームコミュニケーションのプラットフォームに参入することがあれば、そこからまた生活者がどんな傾向であるかのデータも取りやすくなるとのこと。

『マインクラフト』で教育する事例や、『アサシンクリード オリジンズ』のエジプトツアーモードを例に、多様な業界や業種も、生活者のコミュニケーションの間に入るための施策をしていることもあり、これからもそうした展開が広がるのではないか、とセッションをまとめました。