23.6 C
Tokyo
木曜日, 6月 24, 2021

ビジネス特集 変貌「ソニー」 19年ぶり株価1万円のワケ | IT・ネット

変貌「ソニー」 19年ぶり株価1万円のワケ



「やっと、やっとです」ソニーの社員からはこんなことばが聞こえてきた。去年12月17日、ソニーの株価が1万円を超えた。2001年以来、およそ19年ぶりのことだ。この間、ソニーはどん底の時代を経験した。日本を代表する電機メーカーとされながらも、テレビをはじめとする「ものづくり」で海外メーカーとの価格競争に苦しみ、巨額の赤字を計上した。株価は一時1000円を割り込み、“ソニーショック”などと日本の株価低迷の象徴として語られることもあった。その後、かつて輝きを放ったパソコンや電池事業売却、人員削減などを経て、ビジネスモデルの転換を推し進めてきた。その結果が「19年ぶりの株価1万円」だ。ソニーはどう変わったのか?そして、今後どこへ向かうのか?(経済部記者 猪俣英俊)


“コンテンツ”の会社に

去年、社会現象を巻き起こした人気アニメ「鬼滅の刃」。劇場版の興行収入が公開から73日間で324億円に達し、国内で上映された映画の歴代1位を記録した。

コロナ禍で映画館への足が遠のきがちな逆境の中でも多くの人の心を捉えた、このアニメの成功を支えたのがソニーだ。

企画・制作したのはグループ会社の「アニプレックス」。
ソニーミュージックが販売したLiSAさんによる主題歌もヒットを記録した。
ソニーが力を入れてきたアニメ、映画、音楽、ゲームといったコンテンツビジネスが相乗効果をあげた形だ。

実はソニーの業績を支えているのは、こうしたコンテンツビジネスだ。
去年7年ぶりの新型ゲーム機として発売した「プレイステーション5」も、インターネットにつなぎソフトをダウンロードして買ってもらう、一種のコンテンツビジネスだ。

2019年度の売り上げ8兆2598億円のうち、ゲーム、映画、音楽の3つの合計は45%と全体の半分近くを占めている。
テレビや携帯音楽プレーヤーなどのエレクトロニクスは24%で、いまやソニーは「コンテンツの会社」と言える。

この分野では積極的なM&Aも仕掛けている。

去年には、アメリカの通信大手AT&Tが展開するアニメ配信事業「クランチロール」を1200億円余りで買収することを決めた。
クランチロールは世界200以上の国や地域でアニメなどを配信し、会員はおよそ9000万人。
動画配信はネットフリックスやアマゾン、ウォルト・ディズニーが先行しているが、買収によってこれらの会員と視聴データを獲得し、世界のアニメ市場の開拓を図ろうとしている。

“ソニーショック”の教訓

コンテンツビジネスへ転換した背景には、“どん底時代”の教訓があるという。

株価が1万円を超えていた2001年5月25日、家電量販店にはソニーの薄型テレビやパソコン「VAIO」、MDプレーヤーが並んでいた。
2000年度の売り上げ7兆3148億円のうち、エレクトロニクスがおよそ7割を占め、ゲームは9%、映画と音楽はそれぞれ8%にすぎなかった。
創業以来、ウォークマンをはじめ画期的な製品を次々と生み出し、高品質の代名詞であるメイド・イン・ジャパンを担ったソニーが“ものづくり”の会社であることを誰も疑わなかった。

しかしこの年、エレクトロニクスの不振で業績予想を下方修正し、株価は4000円を割り込む水準まで落ち込んだ。
原因はグローバルな価格競争の激化だった。家電がデジタル化したことで、アナログ時代に日本の強みだった“すりあわせ型”のものづくりが優位さを失った。韓国メーカーなどとの品質の違いが縮まり、急速に低価格化が進んだ。いわゆる家電のコモディティ化についていけなくなったのだ。

追い打ちをかけたのが、2008年度のリーマンショックだった。世界的に景気が悪化し、家電需要も消失。2008年度から4期連続で最終赤字に陥った。
過去最大の4566億円の最終赤字(2011年度)が発表された2012年に、株価はついに1000円を切った。

この苦い経験からソニーが学んだのは、価格競争に巻き込まれない高い価値を認められる商品に絞らなければ、成長も望めないということだ。
そこで選択と集中を進める構造改革に踏み切った。

2013年にはビデオなどを作っていた岐阜県の美濃加茂工場を閉鎖。
2014年にはパソコン事業「VAIO」から撤退。
2017年にはリチウムイオン電池事業からも撤退した。
大規模な人員削減も行った。
一方、テレビはシェアを追わず、高価格帯に特化する戦略に切り替え、黒字化にこぎつけた。

あわせて新たな収益の柱に位置づけたのが、コンテンツビジネスだ。
家電というハードを売るのではなく、ソフト=コンテンツで継続的に売り上げをあげていくビジネスモデルへの転換を目指した。
例えば「鬼滅の刃」のようなアニメのヒットをきっかけに、音楽やゲームでも関連するコンテンツを出し、相乗効果で売り上げを増やしていくという循環だ。

また、毎月定額を課金する、いわゆるサブスクリプションサービスも組み合わせた。
ゲーム事業では、ゲーム機とゲームソフトを単発で売るのではなく、ネットを通じてソフトを利用できるよう仕組みを作り、ユーザーとのつながりを保つようになった。
いまやプレイステーションでソフトを楽しむための有料会員は世界でおよそ4600万人に上り、安定的な収益源となっているというわけだ。

狙うEV市場

コンテンツビジネスに次いで、今のソニーの大きな収益源となっているのが画像センサー事業だ。
一般の消費者の目には触れにくい「部品」ではあるが、去年の世界シェアは50%とトップを誇る。

世界最大規模のテクノロジーの見本市、CESで、ことしソニーは開発中の自動運転EV(電気自動車)の公道での走行実験を公開。
アップルがEV参入かという情報が伝わったタイミングとも重なり、注目を集めた。

この車は、画像センサーが自動運転のカギを握っていて、道路の状況と運転する人の表情をリアルタイムで読み取り、自動でハンドルやブレーキの操作を支援するなどの役割を果たしている。

スマートフォンの普及に伴って需要が拡大してきた画像センサーだが、自動運転技術に採用されれば、さらに市場が広がることになる。
開発を担当した川西泉執行役員は、こう意気込む。

川西執行役員
「自動運転EVの開発では、周りをセンシングする技術、車を制御する技術、さらに社会インフラと連携させる技術が必要になり、総合力が求められる。100年に1度の自動車の変革期にソニーとして何ができるか、高い目標をもってチャレンジしたい」

新生「ソニーグループ」の今後は

ソニーはことし4月、社名を「ソニーグループ」に改め、新たなスタートを切る。
祖業のエレクトロニクスもほかの多くの事業と同じように持ち株会社の傘下に置かれる形になるが、今後の経営環境は決して楽観視することはできない。

コンテンツビジネスで、先行する巨大なライバルと競争するためには、世界で通用する優良なコンテンツを生み出し続けなければならない。
トップシェアを誇る画像センサーでも、韓国のサムスン電子などが追い上げようとしている。
そして何より、次の時代において収益の柱となりうる新たな事業の芽を育てることも必要だ。

ソニーがどのような針路をとるのか?それは日本の企業や経済にも大きなインパクトを与えるだけに、目が離せない。

経済部記者
猪俣 英俊
平成24年入局
函館局、富山局を経て現所属
重工業の素材メーカーやアパレル業界を担当後、現在は電機メーカー担当

Related Articles

『Baba Is You』ゲームのルール文を書き換...

 フィンランドのHempuliによるパズルゲ...

「ファーミングシミュレーター 22」の発売日が決定...

 バンダイナムコエンターテインメントは、シミュレー...

【新作】BIOHAZARD VILLAGE PS4...

時間制限キツイっす。もうちょっとゆっくり遊ばせ...

ゲーミングPCやコンソール機にクラウドゲームも 2...

新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変化し...

TGS2018“プレイステーションブース”試遊コー...

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント...