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火曜日, 5月 18, 2021

NTT澤田社長が語る「ドコモ完全子会社」後に目指す“2030年のゲームチェンジ” – ケータイ Watch

 17日、NTT(持株)代表取締役社長の澤田純氏が、「NTT R&Dフォーラム2020」の基調講演に登壇した。NTTドコモの完全子会社化に向けた株式取得(TOB)終了を発表した直後のタイミングとなった。

澤田社長

 澤田氏は「これまでNTTドコモの完全子会社化について、これまで国内3番手、GAFAと呼ばれるOTTとどう伍していくか解説してきたが、それはどちらかと言えば受動的な説明。能動的な視点ではドコモを強くし、NTT、ひいては日本、そして世界が豊かになるための営みを推進していく」と述べ、ドコモ子会社後、2030年を見据えた同社の戦略を紹介した。

澤田氏「2014年に衝撃を受けた言葉」

 新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた今後の世界のあり方はどうなるのか。澤田氏は、その前段階として、総務省がまとめた日本と海外との技術貿易収支のデータを示す。

技術貿易収支

 そのデータのうち、情報通信の収支を示した同氏は「情報通信はずっとマイナス」とした上で、「2014年の目にした、とあるジャーナリストの発言に大変なショックを受けた」と語る。

 その言葉は、日経コンピュータに掲載された木村岳史氏による、日本のIT産業の貧弱さを指摘したものだ。

 澤田氏は「いろんな技術でゲームチェンジを図っていくべきではないか」と述べ、ドコモ子会社化の背景に通ずる想いを示す。

リモートワールドとニューグローカリズム

 澤田氏は、新型コロナウイルス感染症を受けた今後の社会像として「リモートワールド(分離型社会)」と「ニューグローカリズム」という言葉を挙げる。

 リモートワールドは、感染拡大を抑えるために密を避けつつも経済活動を活性化させるという意味。もう一方のニューグローカリズムは、経済における世界各国の垣根が低くなりつつも人の動きが制限され各地に根ざしていくという意味。そのどちらも、相反する考えを内包するもので、「パラコンシステント(矛盾する考えを受け入れる)なもの」と澤田氏。

 そこでNTTグループとしては、経済・安全保障において信頼できる人たちとのサプライチェーンが必要になること、エネルギー自立に向けた取り組みが必要になることなどを紹介する。

IOWN構想とは

 エネルギー自立の道筋として、再生可能エネルギーの活用や、テレワークでCO2排出が通常の7割に抑えられることなどを挙げた澤田氏は、NTTが2030年の実現を目指す「IOWN構想」をあらためて紹介する。

 IOWN(アイオン)とは、Innovative Optical and Wireless Networkを略したもの。光をこれまで以上に活用し、ハードウェア内の回路、ゆくゆくは半導体にも光を使った通信を組み込もうというコンセプトだ。すでにNTTでは、メモリー同士を光通信技術で繋ぐ、爪先サイズのデバイス(光電融合デバイス)を試作済みで、ありとあらゆる場所での光化を2030年にも実現させる考え。

 2022年には、世界の通信量が2020年現在の1.5倍になるという予測を示す澤田氏は、さらに「ディスアグリゲーテッド コンピューティングモデル」というコンセプトを示す。

 ディスアグリゲートとは、いわば分解するといった意味になる。つまり多くのコンピューターはCPUとメモリー、ストレージ、GPUなどがひとつのまとまりになって動作するが、各パーツが光インターフェイスを備える未来になれば、状況にあわせてCPU、GPU、ストレージを動的に組み合わせられる、という考え方だ。

 AWSなどのクラウドサービスで実現しているサービス内容に近しいものと思えるが、光インターフェイスでは、より高速かつ大容量のデータのやり取りを、低く抑えた消費電力で実現するというメリットもある。澤田氏は、ディスアグリゲートなコンピューターが実現すれば、新たなOSが必要になり「移動と固定が融合する世界に入れていきたい」と意気込む。

 また固定通信ネットワークでも、既存の光ファイバーに分岐するファイバーを付加するアイデアも紹介。たとえば通信ルートがスター型(中心となる機器を介して繋がるネットワーク。一般的なLANなど)に分岐するファイバーを追加すると、複数の通信経路(ループ)を実現でき、どこか繋がらなくなっても、逆方向に通信して故障箇所を避けたりするなど、信頼性を高められる。

 こうしたIOWNプラットフォームを見据え、今後提供するサービスとして、挙げられたのは「パーソナルメディカルソリューション」だ。これは自分自身をデジタルデータ化する「デジタルツイン」を実現した上で、医療現場において、医薬品をデジタルツイン、つまりバーチャルな自分に試す、あるいはセンシングで心臓の状況をチェックしてもらう、いわばリモートでの聴診器により医療従事者に診察してもらう、といったことも想定するサービス。

 またIOWNでの実装を想定した4Dデジタル基盤が2021年度から順次、実用化される。これは自動車などの高精度な位置情報と地図データ、リアルタイムのセンシングデータを統合する地理空間情報データベース。澤田氏はありとあらゆるものに使われていく、と幅広い活用を見込む。

 このほかIOWN構想としては、低軌道衛星をデータセンターとして活用し、分散コンピューティングを実現するアイデアもある。消費電力を抑えるプラットフォームであることを踏まえ、太陽光発電でエネルギーをまかない、計算結果とレーザー伝送などで地上へ伝える。

 IOWN構想は最終的に2030年の実現を目指すものだが、そのための研究開発のロードマップとして、2022年度後半に光電融合デバイスやディスアグリゲートなコンピューターの基本概念とリファレンスが固まる。

 2023年度末にはドコモの5G基盤展開率(全国を10kmのメッシュで区切り、無人地帯や海上を除く基地局設置の割合)は97%となり、日本中に5Gネットワークが張り巡らされる。

 2025年には、核融合実験炉の最初の点火(ファースト・プラズマ)が目されており、その最適運用にもNTTは協力する。

 澤田氏は「IOWNによって社会が変わる。リモートワールド、ニューグローカリズムのなかで、ゲームチェンジし、日本の自立を実現し世界へ貢献していく」と意気込みを示し、講演の締めくくりでも「(今回の講演で)貫いて言いたいのは『ゲームチェンジ』。未来を変えるために技術研究を進めている」と語った。

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