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火曜日, 11月 24, 2020

【ネタバレあり】『The Last of Us Part 2』は、映画を最も震え上がらせるーー映画評論家・小野寺系が“問題作”の可能性を考える(リアルサウンド)

 数々の作品が高い評価を受けてきた、アメリカのゲーム開発会社ノーティードッグのAAA(トリプルエー)タイトル『The Last of Us Part II』は、かつてない挑戦的なストーリーと趣向を用意し、多くのプレイヤーを戸惑わせる“問題作”となった。この騒動によって、あるキャラクターを演じた声優がSNSで脅迫を受けるという、冗談では済まない事態も起こってしまった。

 その一方で、本作を絶賛する声も多いのは事実である。この激烈な賛否の渦を巻き起こした本作『The Last of Us Part II』とは、いったい何だったのか? ここでは、「プレイする映画」との異名を持つ本シリーズを、映画評論家の目線で読み解きながら、本作が真に描いたものや、そこから見通せるゲームの可能性について考えていきたい。

※本記事は、『The Last of Us Part 2』の終盤を除く重要な要素、及び前作のエンディングについてのネタバレを多く含みます。本作を既にクリアしている人々、あるいは本作を巡る批判意見を目にして作品を手に取ることを止めた人々、あるいはゲームの途中でプレイを止めた人々に向けた文章となっておりますので、未プレイの方はご注意下さい。

名作と呼ばれた前作

 シリーズの舞台となっているのは、文明が破壊され、荒廃したアメリカ。謎のウィルスが蔓延し、感染した人間がゾンビや化け物のような姿になって人間を襲うようになったことが、そんな世界を作り出した原因である。主人公は、ウィルス騒動によって愛する娘を亡くして以来、孤独な生活を続けてきた中年男のジョエル。彼は、14歳の少女を目的地に運ぶという仕事を依頼される。感染者や人間の略奪者から身を隠し、ときに殺害しながら、徒歩で進んでいくジョエルと少女は、生き残るため協力することで、次第に絆を深めていく。その道中、その少女エリーはなんとウィルスの抗体を持つ奇跡の子どもだということが発覚する。

 本シリーズのジャンルは、いわゆるステルスアクションである。限られた武器弾薬を駆使して、立ちふさがる人間や感染者たちを排除しながら進んでいく。生き抜くためには、敵の背後に回り込んで不意打ちを仕掛け、できるだけ自分の被害や消費を最小にすることがコツとなる。一度見つかると敵が一気に集まってくるため、緊張感あふれるプレイが要求されることになる。また、ドラマ部分では、多くのゾンビ映画やドラマの設定を下敷きにしながら、アルフォンソ・キュアロン監督の映画『トゥモロー・ワールド』(2006年)を思い起こさせる、人間が滅びていく未来への絶望と、救いのない展開がシリアスに描かれていく。

 第1作のクライマックスは衝撃的なものとなった。ファイアフライという武装組織がエリーを迎え入れると、彼らは彼女の身体を使ってウィルスのワクチンを開発しようとする。しかし世界を救う代償として、エリーは死ななければならないのだという。苦悩したジョエルは、決心を固めるとファイアフライの研究施設の職員たちを次々に殺害し、エリーを救い出すことに成功する。そして、目覚めたエリーに対して、ジョエルは嘘をつき、彼女を罪悪感から遠ざけようとするのだった。

 人類の未来を犠牲にして、そして研究施設の人々の命をも犠牲にして、一人の少女の命を助ける。エリーはジョエルのなかで、いつしかそこまで大きな存在になっていたのだ。この苦々しくも感動的なストーリーを、多くのプレイヤーは支持し、『The Last of Us』は名作と呼ばれるまでになったのだ。

・序盤から衝撃的な展開が起こる続編
 第一作の評価を受け、大きな期待を寄せられた続編『The Last of Us Part II』は、人間たちのコミュニティがある、ジャクソンという街から物語がスタートする。そこには、穏やかに暮らすジョエルと、19歳になり成長したエリーが住んでいる。エリーは仲の良い女友達のディーナと、恋人として付き合いだしたばかりだ。

 だが、そのストーリーのなかで、ファンにとって序盤から大変な事態が起こる。前作の主人公ジョエルが、数人のグループに拉致されると、執拗な拷問を受けて殴り殺されてしまうのである。エリーはジョエルを助けようとするが、したたかに打ちのめされた挙げ句、見逃されてかろうじて生き延びることができたのだった。

 ジョエルのあっけない死に、多くのファンはショックを受けることとなった。そして主人公は、ジョエルの復讐を誓うエリーへとバトンタッチする。ジョエルを惨殺したグループの首謀者は、アビーという女だ。彼女への復讐を果たすため、エリーとディーナは、アビーが所属する武装組織WLFの拠点があるシアトルへと旅立った。

 本作は前作同様、感染者や敵対組織を、できるだけステルス状態で倒しながら目的地へと進んでいくというゲームシステム。ただ、暗い屋内で感染者が次々に襲いかかってくるステージはホラーゲーム並みに怖ろしく、筆者のように怖がりのプレイヤーの場合、冷静な対処が難しくなってしまう。ちなみに筆者は一部のステージを涙目で攻略しており、暗闇のなかをただ走り回りながら刃物を振り回すだけという、戦略も何もないプレイでなんとかやり過ごす場面が幾度もあった……。

 このように心が弱くなっている状態で、シアトルの病院に行かなければならないという展開になったとき、直感的に「病院に行くのは絶対に怖いな……いやだな」と思ってると、意外にもそこは感染者がいないステージだったので、「本当に良かった」と、心から安堵したものだった。だが、このように油断させておいて、じつは終盤にまた病院に行かねばならないという、鬼畜のような展開が用意されている。本作の制作者は、そんな心の弱いプレイヤーの心理を全部お見通しだったのである。

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