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月曜日, 10月 26, 2020

秋吉 健のArcaic Singularity:連載150回記念!3年間追いかけた話題を総まとめ。通信業界と身の回りの技術はどう変わり、何を伝えたかったのか【コラム】 – S-MAX

」も、今回でついに150回となります。毎週欠かすことなく連載を続けられたのも、すべては読者の皆様と毎度の如き寄稿遅延に寛容であり続けてくれたS-MAX編集部のおかげです。まずはすべての方々に謝辞を申し上げたいと思います。

約3年にわたり、通信業界のみならずテクノロジーやITに関連するさまざまな話題を取り上げてきましたが、たった3年の間にも世界はめまいがするほどの圧倒的な速度で変化・進化してきました。3年前は巨大な箱のような端末でしか実装できなかった5Gも、今や人々が手にするスマートフォン(スマホ)で手軽に使える時代です。通信業界やテクノロジー業界の進歩は、十年一昔ではなく一年一昔といった様相です。

そのような目まぐるしい世界を外側から俯瞰してきた本コラムですが、これまでの149回でどのようなテーマを扱ってきたのか、少し振り返ってみました。IT技術であったり、スマホサービスであったり、料金施策であったり。常に多種多様なジャンルにチャレンジしてきた自負はありますが、やはりテーマは筆者の得意分野や読者層に合わせて偏ります。

今回はそんな「コラムで取り扱ったテーマ」の上位3位までを取り上げ、業界と時代の変遷について考えたいと思います。

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テクノロジーの最前線で筆者は何を見つめ、何を考えてきたのか

■人々の生活インフラとなったアプリとサービス
それでは早速、本連載コラムで取り扱ってきたジャンルから、上位3つを取り上げてみたいと思います。

どのコラムも「IT技術とサービス」、「ロボット技術と通信技術」といったように複数のテーマが存在しますが、その中でも筆者が最も重視し読者に汲んでもらいたかったテーマをメインとして集計しました。

第3位となったのは「アプリ、サービス」で、15本のコラムを執筆しました。私たちが毎日のようにスマホを利用するのは、そこに扱いやすく便利なアプリやサービスが大量に存在するからです。

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時にはVtuberブームのように新しい技術トレンドとコンテンツビジネスの匂いをいち早く感じ取り、コラムとして取り上げたことも

人々にとってのアプリやコンテンツサービスというものは、かつては単なる「道具」でした。動画を観たいからYouTubeアプリを入れる、スケジュールを管理したいからカレンダーアプリやToDoアプリを入れる、といった具合です。

しかし、時代とともにアプリやサービスは「生活の基幹インフラ」として機能し始めます。LINEは単なるコミュニケーションツールから電子決済サービスや企業のプロモーションツールへと変貌し、通信キャリアによる保険・金融サービスは何十年という人生設計にすら関与するようになりました。

携帯電話の登場によって人々は「場所」に縛られなくなった代わりに「人」に縛られるようになりましたが、スマホとそのアプリやサービスは、人々を「通信」そのものに縛り付けたのです。そしてその流れはさらに加速し、現在では巨大なポイント経済圏として動き始めています。

NTTドコモをはじめとした移動体通信事業者(MNO)各社が経済圏構想にひた走り、スーパーアプリと呼ばれる統合型の金融サービスアプリの開発と導入を急ぐ背景には、業界内の勢力状況と通信業界全体のトレンドが複雑怪奇に絡み合っています。ここまでくると、もはやアプリやサービスといった話にとどまらず、業界全体の話題として扱うべきものになります。

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経済圏ビジネスの雄である楽天がMNOへ参入したことで、各社のユーザー獲得競争は間違いなく激化していくだろう

MNO関連以外を見れば、ゲームアプリ関連の話題も多く取り上げました。特に筆者がコアゲーマーであることから、ゲーム内課金によるガチャ問題やゲーム業界の潮流について語るコラムが多く、時には恥を承知で筆者の廃課金ぶりを晒し、課金問題について掘り下げたこともありました。

2020年現在、スマホゲーム業界は非常に微妙な状況にあります。業界的には完全に最盛期を越えてしまい、斜陽に近い不穏な空気が流れているものの、新型コロナウイルス感染症問題(コロナ禍)によって人々がインドア生活を余儀なくされ、「暇つぶし」として副次的にスマホゲームに課金したことでかろうじて延命された、といったような状況が半年ほど続いています。

この状況についてはさらに詳しく調査を行い、後日またコラムとして取り上げられればと考えています。

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ゲームへの課金のしすぎには十分ご注意下さい(自戒を込めつつ)

■日々勉強日々精進。七転八倒のコラム執筆
第2位となったのは「テクノロジー、技術解説」で、19本のコラムを執筆しました。一般にはあまり注目されないスマホを構成する様々な技術から、最先端のロボット技術、さらには量子コンピューターまで扱ってきました。

最先端技術の解説だけあり、興味のない読者には本当に眠くなるような話ばかりだったかと反省しています。しかし、自分が使っている道具がどのような技術で作られ、どのような未来を創り出すのか、その一端に想いを馳せるようなコラムでありたかったというのが、筆者としての素直な気持ちです。

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量子コンピューターとの邂逅は、筆者のライター人生の中でもなかなかのインパクトだった

筆者はこの3年間、ひたすらに勉強し続けてきました。……いえ、正確にはそのさらに2年前からの合計5年余り、テクノロジーやサービス、コンテンツなどについての勉強をしない日は1日たりとも存在しなかったと言い切れます。

毎日文献を探し、その真贋を確かめ、時に自分の足で取材に赴き。1つの技術について勉強をすると、その中に2~3の疑問や新たに勉強しなければいけない技術が出てきます。それをまた調べる作業で、さらに疑問と不明点が出てきます。

まるで終わりのない迷路のような作業ですが、そこで得られた知識をどれだけ人々へ分かりやすく伝えられるのか、そればかりを考える日々でした。

残念ながら、その目標はほとんど未達です。分かりやすく解説したつもりが逆に分かりづらくなり、筆者の悪い癖である長文のせいで、読者に途中で飽きられてしまうことも多かったでしょう。

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長文は筆者の悪癖である。コラムの平均文字数は4000文字。時には5000文字を軽く超えることも

間違った情報や、若干古い情報を載せてしまったこともありました。記事とは非情です。掲載元である本S-MAXの記事は訂正できても、転載先となる別媒体に掲載されてしまった記事は訂正のしようがありません。ほんの数件ですが、メーカーや通信キャリアからクレームを頂いてしまったこともありました。

だからこそ全力で勉強し続けなければいけないと自戒し、常に覚悟を持って執筆します。テクノロジーは止まりません。昨日まで最先端であった技術が突然陳腐化することすらあります。

コラム連載開始以来、常に「感性の原点からテクノロジーを俯瞰する」と枕詞のように綴り続けてきた理由がここにあります。テクノロジーとは常に移り変わるものですが、人々の感性がそれほど劇的に大きく変わることはありません。変わらない場所があればこそ、テクノロジーが何に使われるべきなのか、また人とテクノロジーがどう関わっていくべきなのかを客観的に語れると考えるのです。

そしてこのテーマは、これからも本コラムの根幹主題として据え続けていきたいと思います。

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どんな時も感性の原点は同じでありたい。日々変わり続ける世界を変わらない感性で見つめたい

■通信業界を揺るがし続けた激動の3年間
そして堂々の第1位となったのは……「通信業界全般」です。圧巻の33本となりました。実に全コラムの2割以上、月に1本は通信業界の動向や各社の施策について考察していたことになります。

ある意味当然の結果ではありますが、この3年間の通信業界の激動ぶりは、その長い歴史の中でもターニングポイントと呼ばれるような大変動が多かった期間でもあります。

2016年頃から仮想移動体通信事業者(MVNO)ブームが始まり、コラムの連載が始まった頃がちょうどその最盛期でもありました。それまでMVNOを相手にもしていなかったMNO各社はMVNOの勢いと人気に危機感を感じ始め、2017年には本格的に大容量プランの提供を開始し始めます。

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MNO各社はARPUを下げたくない一心から大容量化でお得感を出そうと必死になった

これによって「高い料金ながらも大容量で高品質な通信」と、「リーズナブルだが通信品質は必要最低限」というMNOとMVNOの図式が生まれ、ある程度業界の成長や多様性にも目処が立ったかと思われました。

しかし激変は2018年に起こります。当時の菅官房長官(現:菅内閣総理大臣)による「(携帯電話料金は)4割程度下げる余地がある」発言です。

それ以前からも有識者会議などを踏まえつつ通信料金の低減に関する議論は度々繰り返されていましたが、この「鶴の一声」によって状況は一変し、NTTドコモは2019年6月に通信料金プランを大改革、それによって収益力が大きく低下する事態となります。

この動きはMNO各社の経済圏構想を加速させることとなり、電子マネーおよびポイントビジネスによって、消費者はこれまで以上に通信キャリアの変更が難しくなるという事態に陥ります。

そのため、消費者の流動性確保が目的であったはずの料金プランへの介入および電気通信事業法改正は、効果を発揮するどころか真逆の「消費者流動性の固着化」を生んでしまったのです。

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これまでのところ、政府の施策は「大失敗」と断言して良い

政府による料金値下げの圧力は、消費者流動性の悪化を招いただけでは収まりません。収益性が悪化したNTTドコモは、グループ企業であるNTTの完全子会社となることが発表されました。

NTT自体、近年は国際競争力の低下や国内の通信インフラの維持と強化で多くの懸念材料を抱えており、その企業体力と競争力の維持をどうするかで勘案していただけに、今回の完全子会社化は「驚きはしたが起こるべくして起きた事件」であったと言えます。

この件に関連し、NTTコムウェアやNTTコミュニケーションズをNTTドコモに吸収合併させる可能性すらNTTは示唆しており、NTTが再び超巨大企業へと舞い戻る危険があります。

奇しくもこのコラムを執筆している16日には、KDDIによる「au新サービス発表会」が行われました。その質疑応答の場でKDDIの髙橋誠社長は、

髙橋誠社長
「(NTTとしては)基本的にNTT法に抵触しないから問題はないという主張だったが、分割の観点から言って、これまではNTTドコモのシェアを薄くしていくという流れだったのに、急転直下その逆にいく方針となり大変驚いている」
「公正競争が阻害されないかが一番の問題」

このように言及し、強い危機感を示しています。

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KDDIにしてみれば、かつてシェアを独占されていた「ドコモ一強時代」のトラウマが蘇るのは致し方ないところだ(画像は髙橋誠社長)

すべては総務省による強引な施策と指導と法改正が生んだ歪みであり、その歪みが今後どういった亀裂と崩壊を生むのか予測すらつきません。そもそもNTTドコモの完全子会社化をこのまま認めるのかどうかすらも不透明です。

こういった点について、本コラムでは事あるごとに時事ネタとして取り上げてきましたが、その全容をお伝えしきれているとは筆者自らが感じていません。

通信が私たちの生活の基幹インフラとなった今だからこそ、その基幹を揺るがしかねない大事件であるという危機感をどこまで共有できているのか、筆者にはそれほど自信がありません。

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NTTドコモの完全子会社化と他MNOのマルチブランド戦略は、他MVNOを駆逐し業界の寡占化とユーザーの固着化をさらに加速させる危険性を大いにはらんでいる

■テクノロジーある限り、筆は続く
ここまで書き続け、「ああ、また長文になってしまった」と反省するまでが本コラムの意義、そして自嘲でもあります。決して開き直るつもりはありませんが、しかし伝えたい内容の取捨選択をできる限り行っても、いつもこれだけの長文になってしまいます。

そんな筆者の悪癖を知ればこそ、S-MAX編集部では「日曜日なら暇つぶしに読んでもらえるかもね」と毎週日曜日に掲載して頂ける形となったことにも、感謝感謝の日々です。

最後に、本連載のジャンル集計の結果をまとめて掲載しておきます。

・通信業界全般……33本
・テクノロジー、技術解説……19本
・アプリ、サービス……15本
・その他スマホ……14本
・まとめ、総評……14本
・セキュリティ、災害対策……9本
・AI、xR、IoT、ロボット……8本
・Apple&iPhone……7本
・SNS、インターネット……6本
・自動車……5本
・How To……5本
・音楽……5本
・スマホ市場……4本
・リテラシー……3本
・プログラミング教育……2本

・合計……149本

こうして眺めるだけでも、実に多種多様なジャンルに挑戦してきたと思います。そしてこれからも、このジャンル分けがさらに複雑怪奇になるほどに様々な分野と業界にチャレンジしていきたいと思います。

Arcaic Singularity(古拙な特異点)とは、テクノロジーを指した造語ではありません。テクノロジーを俯瞰する、その目と視点のことです。昭和生まれの古臭い感性が何を眺め、何を考え、何を伝えたいのか。これからも執筆に精進していきたいと思います。

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感性は古くとも、新しきを常に追い続けるモバイルライターでありたい

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