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火曜日, 5月 18, 2021

なぜ主人公たちに“共感”できないのか?『The Last of Us Part II』挑戦的な仕掛けを考察(エムオンプレス)

大ヒットのアクションゲーム『アンチャーテッド』で知られる開発会社ノーティドッグが2013年に世へ送り出した『The Last of Us』は、数々のゲームアワードを受賞した同社の看板タイトルです。“謎の寄生菌の感染爆発から20年後のアメリカ”を舞台としたサバイバルアクションゲームで、主人公のジョエルがあるトラブルから同行することになった14歳の少女エリーと共に人間を襲う感染者や対立する人間たちと戦いながら、アメリカを横断するというストーリーでした。今回紹介する『The Last of Us Part II』はさらに5年後の世界を舞台とし、19歳となったエリーが主人公です。掲げられたテーマは“復讐”。発売から約1ヶ月が経った現在、物語のラストを見届けたプレイヤーたちがインターネット上で盛んに賛否両論の意見を交わしています。
筆者は本作に対して非常に複雑な思いを抱えています。初めに述べておくと、筆者は本作のプレイにおいてただの一度も心から楽しい気持ちになったことはありませんし、プレイを進めるたび気が重くて仕方がありませんでした。ですが、この強烈な体験を与えてくれるゲームをプレイした価値は絶対にあると断言します。アンバランスな感情が生まれる理由はどこにあったのか。本稿では前作以上の衝撃作と言える『The Last of Us Part II』が投げかけるテーマについて考察します。

【詳細】衝撃作『The Last of Us Part II』

文 / 内藤ハサミ

◆リアルな美術、非の打ち所がないユーザビリティ

パンデミックにより危険な地へと変わり果てたアメリカの横断を終え、エリーとジョエルはワイオミング州ジャクソンにある小さな生存者コミュニティで暮らしていました。一見安定しているように見える生活です。しかし依然として外を徘徊する感染者、安定した境遇にない生存者からの襲撃には備えなければなりません。協力し合って生活をする人たちに馴染み、共に暮らしを作り上げていたエリーとジョエルですが、ある日エリーを“復讐”へと駆り立てる衝撃的な事件が起こります。前作に思い入れのあるプレイヤーだったのであれば、なお辛いであろうその事件は数々の悲しみの引き金となるのです。いや、引き金はすでに引かれていました。それはあとになってわかることですが……。

美しいグラフィックの完成度、丁寧に調整されたユーザーインターフェースにはまずだれもが目を見張ることでしょう。緻密で写実的なことはもちろんですが、光と影の使いかた、インテリアなどのセンス、オブジェクトの配置などどれをとっても確固たるポリシーを以て作られていることがわかります。それは美の演出だけではなく、プレイヤーの視覚を誘導することにも効果があります。本作は基本システムとしてのマップは存在しません。さりげなく差す光や目立つ色のオブジェクト、草木や建物の考え抜かれた配置によりほぼ迷うことなく順路を進むことができますし、建物のなかも少し歩き回れば構造が理解できるように構成されています。随所に込められたその工夫をプレイヤーに気づかせず、まるで自然に作られたもののように感じさせるのは、卓越した表現力と確立されたメソッドが成せる業です。

アクションの難易度は5段階から選べます。筆者は最もスタンダードなNORMALで始めました。敵が多い場所などではちょっとしたミスでゲームオーバーになってしまうくらいの緊張感を味わえますが、難しすぎるほどではないバランスです。難易度はプレイ中もメニューのオプションから自由に変えられます。変更によってストーリーの展開が変わることはないので、自分の実力に合わせて調整できるのが助かります。ゲームオーバーになったとき、ミスした直前のタイミングからプレイのリズムを損なわずリトライできるのもいいですね。リトライ時や場面が切り替わる際に発生するロード時間も非常に短く、集中が途切れることはありません。

アクションに要求される操作はわかりやすく、直感的です。序盤のプレイの流れで自然に挿入されるチュートリアルをこなし徐々に慣れていけば、操作に混乱することはないでしょう。とっさに武器の切り替えをすることだけにまごつきましたが、武器種が多いわけではないのでたくさんの敵を相手にするころにはスムーズに操作できるようになりました。何回か、左スティックとタッチパッドを使って“ギターを弾く”操作をする場面があります。ギターコードの知識は必要ないですし、丁寧なガイドのおかげで実際にギターを弾いている気分になれるのが気持ちよかったですね。

腹ばいで動きわずかな隙間にも入っていけるアクション“ほふく”で、よりバラエティに富んだリアルな立ち回りが可能となっています。ほかには新たな特徴を持つ感染者、マップのあちこちで拾えるサプリメントを利用した“工作”、“隠密”などのスキルツリーを育てていけることなど複数の新要素が追加されています。よりエキサイティングになったプレイ感は、前作のファンにも新鮮に映るはずです。操作やアクションに関してきめ細やかに作り込まれていて、不満を感じることはありませんでした。ゲームの冒頭で馬に乗るシーンがあるのですが、馬を操作しているだけでも面白く、充実感を味わえるくらいに操作キャラとの一体感を感じられました。

◆“共感できない”主人公とプレイヤーの関係

冒頭で、今作のストーリーについてはプレイヤーの間でも賛否両論が起こっていると書きました。インターネット上で多く見かけた好意的な意見にも、「手放しに人におすすめできない」というフレーズを含んでいました。生々しく容赦のない流血表現、予定調和でない展開に関しては特に前作をプレイしていれば予想がつきますし、今作にそれとはまったく違う期待をする人はあまりいないでしょう。そのうえで大きなショックを禁じ得ない内容とはどういうものか。プレイを振り返って考えました。

物語中のつらい経験で得られる情緒の解放や高まりを、我々プレイヤーは“カタルシス”と呼び“快”としているはずです。しかし、この作品には手放しで感じられるカタルシスは存在しないと言えます。本作のストーリーで気持ち良さを感じられる人は、間違いなくかなりの少数派です。

主人公のエリーをはじめ、この物語に登場する人物たちはプレイヤーの分身としては描かれていません。極限状態のなかで生を渇望し復讐を願う、強烈な自我を持った存在です。特に主人公のエリーは19歳、大人でも子供でもない揺れる年齢です。模範的行動をとれる良い子という性格ではありません。さらに彼女の境遇が大いに影響しているとはいえ大人から見て可愛げがあるわけでもなければ、無鉄砲で激情家かと思うと冷めた厭世家のようにふるまうこともあったりして非常に不安定です。エリーをはじめとする登場人物たちが要所要所で選択する項目についても、ほとんどのプレイヤーの意図とは全く別のものとなることが多いでしょう。きっと“主人公たちに共感できない”ことへ、苛立ちや失望を覚えるはずです。筆者もそうで、何回かコントローラーを置いて考えこむことすらありました。ですがプレイ終盤に近づくにつれ、それは意図的に作られたものだったのだと感じるようになりました。本作はもともと「主人公に感情移入して物語を味わう」類の作品ではなかったのです。

映画、小説、マンガ、アニメ、ゲームなどの“物語”があるコンテンツにおいて、受け取る側と登場人物の心がある程度近ければ臨場感や共感を得られます。ゲームの場合はプレイヤーが主人公を自分の手で動かすことにより、より感情移入し同一化する面白さを味わえます。それはゲームにしかない醍醐味です。本作はそれを逆手に取り、あえてプレイヤーたちとわかり合えない人間たちの生きる姿を丹念に描き、共感させないことでより強く気持ちを揺さぶります。自分とは全く別の人間の感情を至近距離でぶつけて、増幅した辛さとやるせなさを感じさせること。これこそが、本作の大きな仕掛けなのだと筆者は考えます。

しかし共感できないばかりであれば、物語はつまらないだけで終わってしまいます。どんな人間であろうが、人間らしい感情を持ち合わせていてふいに生まれるシンパシーがあるということもきちんと描いているからこそ、本作は人の気持ちを惹きつけ揺さぶり続けるパワーを持っているのです。前作の主人公であったジョエル、エリー、ジャクソンの人々、そして復讐の旅で出会う人々……。それぞれの理由を持って戦う人間のぶつかり合いには苦しみが伴い、目をそむけたくなるほどに残酷です。しかし互いを理解しようと歩み寄る心も人間は持っています。本作は、自分とは違う人間の壮絶な生きざまをプレイヤーに体験させることで、それらを描ききっています。
エリーの復讐が果たされたのかどうかは、物語の結末でわかります。見届けたプレイヤーの胸には、大きな感情が湧き上がることでしょう。それは、プレイヤーによってかなり違ったものになるはずです。もしかしたら、自分が生きるうえで最も大事にしているものの姿も見えてくるかもしれません。
総プレイ時間は30時間ほど。“面白い”、“つまらない”を超えた凄い体験ができると約束します。『The Last of Us Part II』は、プレイした者に決して忘れらず癒えぬ“ある種の傷”を残すことでしょう。

(c)2020 Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.
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